第10回日本健康福祉政策学会学術大会
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【第10回学術大会に向けて】

地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター

岩永俊博

 地域での保健福祉を取り巻く状況としていくつかのことが考えられます。国からはさまざまな法律や指針が出され、制度や重点項目も目の回るような早さで変更されたりします。健康日本21や次世代育成などでは計画策定や活動の評価が強調され、一方では市町村合併の波に襲われ、とにかく日常の実践活動の進め方などについて右往左往している状況があるのではないでしょうか。保健所についても、福祉との機能の一体化や市町村との関係の変化など、役割を見失いかねない状況も続いています、
 このような状況のなかで、それぞれの地域が、「国の指針があるから、あるいは国から示されたから実施する」という発想ではなく、自分たちの地域での政策の中に、国の指針や制度を生かすという発想での仕事はできないものなのでしょうか。それぞれの地域の住民の暮らしを見据えて、よりよい本当に安心して安全に暮らすことのできる地域を目指した政策を、地域の手で、住民、当事者、行政、議会、専門家や学者が知恵と力を出し合って作るということはできないものなのでしょうか。
 そのような計画づくり、政策づくり、そして活動を地域で可能にするためには何が必要なのか、あるいはそのような活動を何が阻んでいるのか、それぞれの地域でそのような活動を進めるために、住民、当事者、行政、大学の役割、市町村、都道府県、国の役割はどう果たせるのか、あるいは専門職に対する基礎教育はどうあるべきなのか、議論すべき課題は多いと思います。
 いずれにしても、地域のための政策をそれぞれの地域によって作り上げていくことのできる条件を整える方策や考え方などを中心課題にできればと思っています。

 もう一点として、単に研究成果の発表の場というだけでなく、地域の保健福祉の分野の業務や活動に関わる専門家や行政、住民の疑問や悩みを出し合い、解決に向かう道筋を考える場としても位置づけられればと考えています。

 最近朝の時間にNHKのテレビを見ていると、まちかど情報室とかいうコーナーがあって、ときどき、健康づくりの取り組みが放送されます。先日も「下駄を使った健康づくりの取り組みを紹介します」という声が聞こえたので、何かと思えば、下駄の歯を、前の歯と後ろの歯の高さを変えてはめ込んだ下駄を使って、つま先だったり降りたりを繰り返したりさまざまな動きによって足の筋肉を鍛えようということを、その町の理学療法士が工夫して広めようとしているという話でした。そのときは「へーっ、なるほどな」と思ったのですが、そのあとふと思ったことがありました。
 それは、そういう意味での「健康づくり」、つまり、「みんなでウォーキング!!」「食事はこうしたがいいですよ」「健診を受けましょう!!」という働きかけや住民の活動と、「このまちに住む人たちの健やかな暮らしをどう実現していくのか」、つまり、健康や福祉に関する計画を立てることや、健康な暮らしを実現するための条件をどのような戦略で実現するのかを考え、実践していく活動とが、おなじ「健康づくり」という言葉で語られているのではないかということを思ったのです。
 しかも、住民や多くの行政職員には、前者のほうが親しんでいる使い方なのではないのか、そうだとすると、「健康づくり計画」の作成というときに、「それは保健師や栄養士の仕事でしょ」と片づけられるのもうなずける。

 保健や福祉の地域での活動計画や行政計画などは後者のほうで、その計画のなかに前者の活動が組み込まれているのではないでしょうか。つまり地域での健康政策づくりとして捉えること大切なのだろうと思います。それは福祉に関しても同様で、制度の運用は、自分たちの地域での当事者が安心して健やかな暮らしを送るための手段として捉えるためには、地域での福祉政策づくりという観点が大切ということかもしれません。
 今回はそういうことについて、行政学や政策学的な視点も交えながら考える機会にできればと思っています。

 もう一つの柱として、これまで住民の行政とが協働で保健や福祉の計画を作ってきた福島県旧大越町や山形県白鷹町、茨城県旧関城町、佐賀県神崎町など、行動指針的な話し合いを進めてきた千葉県八千代市、愛知県知多市、愛知県旧木曽川町、神奈川県相模原市など、それにこれから協働型の活動を進めようとしている地域や自治体の交流の場を設け、住民、行政、専門家が協働で活動指針や計画作成をする場合の工夫やこつなどの情報を交換できればと思っています。

 今回の学術大会では、参加者が意見交換のできる場を多くしたいと考えています。そのため、壁新聞で張り出して短い時間で発表するのではなく、似たような課題の発表は並べて提示し、ゆっくり意見を交換したり、井戸端会議のような発表形式を中心にしたいと考えています。

 現在、発表演題やワークショップ課題の募集様式を準備会で検討中です。9月中旬ぐらいを募集の締め切りにしたいと考えています。この学会の発表は、「こんなことをしようと思ったがどうもうまくいかない。なぜだろう」という発表や「こんなことをしようと思っているが、こんなやりかたはどうだろう」という発表など大歓迎です。

 地域での保健、福祉の事業や活動の進め方に疑問を持っている人、このままでいいのだろうかと悩んでいる人、あるいは「こうすべきではないか」という自分の考えを出してみたい人、学術大会へのご参加をお待ちします。