-TOPICS-

2008年度

機関紙「やどかり」2008年6月号より

やどかりの里訪問介護員2級養成講座開催
精神障害の体験を活かす仕事づくりの可能性

 平成20年6月から「やどかりの里訪問介護員(ホームヘルパー)2級養成講座」を開講することとなった.

  やどかりの里が本講座を企画するに至った背景には,精神科病院の社会的入院の解消を目指したさいたま市退院支援事業の取り組みが進むにつれて,@ 地域生活を安心して送るための居住支援態勢が不十分であること,A 自立支援員の支援の有効性が明らかとなり,退院後にも継続した支援が受けられるような生活サポーターの必要性が明らかになったことがある.また,やどかりの里においても働く場の拡充や当事者の仕事おこしを模索していた中での企画開催となった.

  さいたま市では,平成18年より退院支援事業の取り組みが始まり,その中で自立支援員として障害のある当事者5名,専門職1名が支援にあたっている.相手にじっくりゆっくり寄り添う支援のあり方,退院を実現するための身近なパートナーとしての役割が求められていることなど,自立支援員の支援の有効性が明らかになっている.「こうした支援が退院後も継続してあれば」というニーズが高まる中で,障害のある当事者が支援を行うセルフヘルプの有効性に加え,専門的な介護支援技術を身に付けることによって,支援の質を高めたいと考えて,本講座を企画している.

  しかし,訪問介護員2級を取得するには130時間(講義58時間,演習42時間,実習30時間)という所定の時間を満たさなければならず,また,多額の受講費用がかかってしまうため,取得に至るまでのハードルは高い.

  そこで,本講座では日程を週2日のペースで時間割をゆるやかに組み,時間をかけて受講できるように工夫し,埼玉県共同募金会から助成を受け,受講費用の負担を軽減できるようにした.

  受講生となる精神障害のある人は10名,やどかりの里のメンバーやさいたま市内の作業所,デイケアなどに通っている人たちである.受講は6月から10月までの5か月にわたり,慣れない講義や演習など負荷がかかることもあり,事前に支援者と疲れの対処など受講中の体調管理や受講にあたっての心がまえを確認したうえで申し込んでもらっている.事務局でも事前に1人1人と面談し,体調管理の方法や心がまえなど話し合いながら進めている.

  受講の理由は,資格の取得ができるからということが大きいが,「誰かの役にたちたい」「自分が活かされている実感をもって仕事したい」「新たな一歩を踏み出したい」など,さまざまな思いで臨んでいる.

 やどかりの里では,昨年度末から居宅介護事業所「ホームヘルプ とも」を開所し,地域生活を支えるための支援態勢を整えるための取り組みを始めており,障害のある人の体験を活かした仕事づくりにつながればと期待している.

(やどかり情報館 佐々木千夏)

 

機関紙「やどかり」2008年5月号より

つながって,生きる
  地域に働き,住民と共に学ぶ労働者

  やどかり出版では,2008 年1月,地域づくり運動全国交流センター編集による「つ ながって,生きる〜地域に働き,住民と共に学ぶ労働者〜」を発行しました.是非, やどかりの里会員の皆様に御一読いただければと思います.今号では著者の1人で ある,荒井一弘さん(新潟県農協労連)に本書にかけた思いをご寄稿いただきました.

 新自由主義的改革は市場原理を社会に浸透 させ「何でもお金に置き換えていくシステム」 をつくり上げてきた.しかしながら,すべて を市場だけで解決していくことは到底不可能 であり,むしろその弊害が顕となってきてい る.それは,社会を個にばらけさせ人間関係 を希薄化させると共に,競争とそれに基づく 格差社会として様々な問題を顕在化させてい る.こうして,人間と人間との関係,自然と 人間との関係が問われてきているのが今日の 時代と言えよう.

  地域づくり運動全国交流センター編「つな がって,生きる‐地域に働き,住民と共に 学ぶ労働者‐」(やどかり出版¥1,700 円)は, こうした今日の時代に問われてきている社会 関係(主として,人間と人間との関係)がど のように体現してきているか,「地域関連労 働者」の仕事と職場を通して動態として把握 しようという試みであったとも言える.

  ところで,本書は全体として今日の時代の 社会関係の変化・発展を,「つながり」をキー ワードに書かれている.その内実は,共同・ 協同・協働,あるいは団結や連帯という言葉 で表現されるものの総称であり,その関連で あると言える.そこで,本書で紹介している 「つながり」を,共同・協同・協働に着目し て概観してみたい.

  まず「共同」は村落共同体など,古くから の共同を意味し,その時代の科学・技術や生 産力の発展段階に規定され,歴史的に培われ てきた自然と人間とのつながりを合わせ持つ と共に,その社会の統治的な側面をも持った もの.言わば,生まれながらに帰属する帰属 的共同という性格が強いものと言える.

  一方,「協同」は,生産力の一定の発展の 下で人格的に自立した個人間の自発的で選択 的な結びつきである.また,異質な生や個性 を認め合う相互承認の過程であり,人間的発 達の過程と不可分の関係にあると言える.

  今日の新自由主義的改革は一方で市場原理 を強引に持ち込んで「共同」を破壊し,個に ばらけさせており,他方で人格的に自立した 異質な個を認め合う相互承認の過程=「協同」 の基盤をつくり出してきており,市場原理と は対抗的に広がってきている.そして,地域 に様々な「協同」が生まれ,「共同」とも重 層的に重なり合うことで,その地域的領域を それぞれの役割を認め合って主体的に再構築 していく「協働」関係が形成されてくる……

  新自由主義的改革の下で,地域関連労働者 の労働過程は大きく歪められ,深刻な事態を もたらしてきている.しかし一方で,地域か らの協同・協働関係を土台にした労働編成の 中から,地域関連労働者の仕事の専門性確立 =労働過程の主人公となっていく保障が生ま れてきていることを本書は訴えている.

  尚,労働過程を通した協同・連帯の再構築 の課題は,地域関連労働者に限られたことで はない.日本の労働運動が労働力の売り手と しての側面だけでなく,労働過程の主人公と なっていく長期的・持続的な課題を位置づけ て,労働過程における今日的な協同・連帯を 構築していくことが求められている.

(新潟県農協労連  荒井 一弘)

 

機関紙「やどかり」2008年5月号より

◆ 協働ネットさいたま・報告 ◆

新たな労働と労働価値の創造に向けて
物販・飲食提供のパイロット事業にまごころが参画

 やどかり情報館と近隣の3施設で作る地域 協同と仕事おこしをテーマとした「協働ネッ トさいたま」の活動に,食事サービスセンター まごころが加わった.

新たな活動の担い手として

  協働ネットさいたまでは,さいたま市から 委託を受け,昨年5月から市営霊園内の植栽 管理業務の一部について,共同で年間200 日, 1日2時間の清掃作業に取り組んでいる.
  新たに園内で授産製品などを販売してみな いかとの市の提案を受け,パイロット的な活 動を開始し,飲食物の提供を含め,事業の可 能性を検証していくために,まごころが新た に参画することとなった.

ニーズに対するアプローチ

  園内にある約20,000 基の墓地には,彼岸, お盆,年末や年始の時期になると,多くの墓 参り客が訪れる.周辺道路は車で溢れ返り, 渋滞になるほどである.
  しかし,園内には元地権者と近隣農家で経 営する野菜と花の直売所があるだけで,調理 されたものなど,すぐに食べられる食品を販< 売する場所はない.物販・飲食提供のパイロッ ト事業のねらいは,潜在的に有するであろう 園内での飲食のニーズに対するアプローチと, 職域を広げ,障害のある人の働く場の創造と, 地域の様々なかたちでの協働の可能性を探る ところにある.

おまんじゅうプロジェクト

  パイロット事業の第一弾は,「おまんじゅう プロジェクト」と称し,彼岸最終日とその前 日にあたる3月22 日(土),23 日(日)の2 日間,野菜と花の直売所隣に仮設販売所を設 け,饅頭を販売した.
  約1か月前から準備を行い,小豆からあん こ,小麦粉から皮…と全てが手づくりの饅頭 を製造しせいろで蒸かしながら,2日間で延 べ1,000 個を完売させた.
  興味を寄せるお客様も多く,味も好評で, 飛ぶように売れた.初日だけで用意したまん じゅうのほとんどが売れてしまい,1日目の 夜に,急遽,追加製造するほどの大盛況であっ た.

事業の可能性と成果

  製造コストや時間,製造手法等の詳細な分 析は充分ではないが,彼岸等で来訪者が集中 する時期に,このような場所で何らかの飲食 物を提供する手応えは充分感じることができ た.
  また,質と安全の担保が何よりも優先され る飲食事業の展開においては,思いつきやイ ベント感覚で出店する模擬店の延長線ではな く,確かな商品コンセプトのもと,お客様に 感動と喜びを与える商品へと進化させる,飽 くなき探究心と創造力が成功をもたらすのだ ということを学ぶことができた.今回,まご ころの参画によって,物販・飲食提供という 新しい事業への可能性とその面白みが見えて きたように感じている.
  そして,今回の「おまんじゅうプロジェク ト」での手応えを糧に,地場産農産物から飲 食商品をメニュー化し,供給・消費する地産 地消の仕組みづくりや,地域住民との交流機 会創出の取り組みについても,今後の協働ネッ トさいたまの活動の目標の1つであることが 明確となった.
  「ここに来たら,必ずこれ」と言われるよう な物販・飲食提供を地域の関係者とともに創っ ていきたい.

(やどかり情報館 宗野政美)

 

機関紙「やどかり」2008年4月号より

T.事務局

 

1.総務

 やどかりの里の活動,運営する事業の根本となる運営主体の法人事務局として,引き続き安定した組織運営を行い,社団法人の会員のみならず,支援者を広げていく.

1)社団法人の事務局として
@ 2008年12月より公益法人制度改革関連3法が施行され,この新法による公益認定が開始される.以後5年以内の公益社団法人への移行を選択するために,政省令に適した必要な環境整備を行い準備を進める.
A やどかりの里のプライバシーポリシー及び危機管理マニュアルを策定する.

2)労務管理
@ 必要な職員を確保し,民主的,健康的な職場環境を今年度も維持していく.
A 労働法関係の改正に伴い,関係する就業規則を随時変更していく.

2.財務

1)会計処理
  新公益法人会計基準による会計処理を順調に維持する.財産,収入支出の有り様は公益認定の際に重要な判断基準となるために,確実に処理をしていく.

2)事務の負担への対応
  障害者自立支援法に基づく新事業開始に伴い予測される請求事務の増大に対応していく.そのために事務員の確保を図る.

3)安定的な運営への努力
  各事業の運営費補助金,委託費等公的な資金,法人の事業収入,寄付金,研究助成金等あらゆる財源を組み合わせ統合し,新事業移行後の運営資金の配分,有り様を検討していく.

 

U.ビジョン検討委員会

 2009年8月に創立40周年を迎えること,自立支援法によって障害者支援のあり方が大きく展開していくことなどを踏まえ,2007年度よりビジョン検討委員会を立ち上げた.主にやどかりの里の全体集会(第三木曜会)で,メンバー・家族・役員・職員等が参加し,やどかりの里の活動理念,活動方針を数回にわたり話し合い,文章化してきた.文章化された活動理念・活動方針は理事会でも協議してきた.
  今年度は,法人全体で確認してきた活動理念・活動方針にもとづき,より具体的なやどかりの里のビジョンを描き出し,その実現のための計画立案を行う.自立支援法の影響を大きく受けるために,その動向を見定めながら,具体的な計画の策定を進めることとする.
  今年度は,やどかりの里人づくりセミナーを開催する予定であり,このセミナーの中でやどかりの里が今後どのように活動を進めていくのか,やどかりの里の使命を確認しながら,視野を広げて考え,話し合い,ビジョンを導き出していく.
@ 1人1人が主体的にビジョンの構築に関わること
A ニーズにもとづく活動であること.潜在的なニーズや社会の変化による新たなニーズがあることを意識していくこと
B やどかりの里の自己完結型の活動ではなく,地域連携を意識した活動であること
C すでにある資源の有効活用を意識すること
  こうした点を意識しながら,活動ビジョンを描き出していく.1人1人の成長と組織全体の成長がバランスよく進んでいくことを大切にしていく. 
  年度後半には,旧法施設の自立支援法にもとづく事業への移行計画(具体的な移行時期,事業内容など)を立案する.

 

V.相談支援・生活支援活動

 今年度は,障害者生活支援センター(見沼区,大宮区,浦和区)と,地域活動支援センター(大宮東部,大宮中部,浦和),相談所,自立生活支援プロジェクトと,昨年度まで居住支援活動として位置づいていた援護寮,グループホーム,ホームヘルプを含めた全体を相談支援・生活支援活動と位置づけ,登録者の状況把握や新たなニーズ把握を行いながら,地域生活支援態勢の整備を目指した取り組みを行う.
  具体的には,@ 多様化するニーズに対応するための,相談支援の力量形成と生活支援の態勢づくり,A 状態の変化に応じ多様な住まいの確保と多様な支援のあり方を検討し,24時間365日の見守り態勢を構築していく,の2点を重点課題とし,コーディネーター連絡会議や退院支援連絡会,精神保健福祉地域ネットワーク連絡会などと連動しながら取り組みを進めていく.

1.市内のニーズ把握とネットワークづくり

 相談支援については,コーディネーター連絡会議への参加を通して,一次相談支援機関としての役割と機能を明確に整理し,各区で開催されているサービス調整会議を活用しながら,地域課題や潜在的ニーズを掘り起こす作業を行っていく.
  ショートステイや居宅介護事業「ホームヘルプ とも」の取り組みから,十分な支援を受けていない人やより困難な状況にある障害のある人の実態が明らかになり,新たなニーズに対応することが求められる.そのためやどかりの里だけで解決が困難な場合も多く,地域の関係機関との連携による支援態勢の構築が必須である.
  精神保健福祉地域ネットワーク連絡会等への参加を通じて,各区のネットワークづくりを具体的に進めていく.

2.居住支援の多様化とサポートシステムづくり

 今年度も,見沼区障害者生活支援センターがさいたま市退院支援事業の委託を受け,市内関係機関が連携して取り組んでいくための連絡調整を行うこととなった.退院支援が進むことによって,必要となってくる地域資源やサービスなどの環境整備を退院支援連絡会と連動しながら進めていく.
  また,フィリップモリスジャパンより活動助成を受けて取り組んできている「ハウジングサポートシステムの構築」については,今年度も引き続き取り組み,チャレンジハウス(体験型住居)の運営管理,新たな資源開拓や支援の多様化を図るとともに,地域住民の支援もふくめてサポートシステムを具体化することを目指していく.

3.事業移行を視野に入れた生活支援態勢づくり

 今年度は,援護寮の事業移行を視野に入れた日中プログラムの充実,自立生活支援プロジェクトの事業化をどのように進めていくのか,相談支援・生活支援活動の全体の動きの中で検討していく必要性がある.そのために,毎月開催される生活支援会議において,登録者の状況把握やニーズの整理を行い,さらに浜砂会との共催で開催する家族研修会(年3回予定)において,家族が抱える課題を明確にしながら,事業移行も含めた生活支援態勢のあり方について具体的な検討を進めていく.

W.労働支援活動

 自立支援法は,応益負担や健康を保って働く環境を整える支援を軽視した低廉な報酬体系のあり方など,障害のある人の働くことに大きな影響がある.自立支援法に振り回されるのではなく,地域に根づき,その人の成長発達を支える働く場づくり(やどかりの里の5つの課題である「働く場を広げる課題』)を目指していく.
 今年度も労働支援活動として,就労に関わる事業所(作業所,小規模通所授産施設,授産施設,福祉工場,労働支援プロジェクト)の連絡会議を定期開催する.連絡会議では情報の共有や学習,アセスメントシートを活用して,支援のあり方についての検討を行い,職員の力量形成を図る.同時に各事業所の状況や利用するメンバーの実際を連絡会議で把握し,各事業所の特徴ややどかりの里における労働支援活動全体の課題を確認する.
  そして,新事業移行を視野に入れた事業展開についてより踏み込んだ議論を進め,見通しを立てていきたい.

1.全体的な整備

 これまで,作業所等各事業所において,「働きたい」願いを持つメンバーの受け入れから退所までの手続きや支援の流れについては,それぞれ独自の進め方や書類があった.各事業所の独自性を大切にしつつ,新事業体系への移行も見据え,統一した書式等を整えていく.互いに積み上げてきたものを共有しながら,支援態勢構築のための整備と向上を図る.

2.やどかりの里の労働支援態勢の全体像の把握と機能整理

 働く場の利用者に対する調査から,一般就労を目指したいというメンバーが13%いることから,労働支援プロジェクトを立ち上げ,一般就労に向けた支援や,働く上での力量形成を集中的に支える機能を整理してきた.
  一方,継続的に働く小規模作業所,授産施設,福祉工場などの働く場は,事業種目や賃金体系,そこで働く人たちの働くスタイルなど多様に整えてきた.「働きたい」という願いを持つ障害のある人に,やどかりの里の各事業所がどのように機能しているかを整理し,課題を明らかにしていく.

3.新事業移行を視野に入れた事業展開についての検討

 精神障害者社会復帰施設や小規模作業所に認められた5年間の移行期限は2年後に迫っている.準備期間も考えると,今年度中に事業移行の方向性を決めていく必要がある.
  具体的には,やどかりの里の労働支援態勢のあるべき姿を描き,国の制度や自治体の事業に関する学習を重ねながら,これらを活用した事業展開を計画していきたい.
  また,さいたま市において,労働行政との連携,さいたま市障害者総合支援センター就労部門,市内の障害者生活支援センターや精神科病院,クリニックなどの資源とも情報交換などを重ねながら,さいたま市における精神障害のある人の労働支援のシステムについて提言していく.

X セルフヘルプネットワーク

1.浜砂会(やどかりの里家族会)

 昨年度同様,第2木曜日に定例会,第4土曜日に談話会を行う.また,生活支援センターと共催で,年3回の研修会も開催します.年度後半には,法人外の施設や家族会などの見学を予定している.その他,暑気払いを兼ねた家族親睦会,バザー協力,クリスマス会などを企画する.人数は少ないが,みんなで協力して1年の取り組みをしていきたいと思う.

Y 特別委員会

1.バザー実行委員会

 法人の財政基盤づくりの要として,今年度もバザーに取り組む.2008年10月12日開催予定である.
  昨年同様,実行委員会の組織化を行い,バザー開催準備・当日開催・事後報告まで,円滑な運営に努める.また,会場設定,雨天時対策,協力者への周知などについて検討し,当日の内容を企画していく.


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