-TOPICS-
  


2001(平成13)年度 機関紙 1面 記事

 


機関紙「やどかり」4月号
(2001.04.15発行)


これからの理事会のあり方をめぐって

 3月24日,新旧理事が集まり,理事会が開催された.理事改選期であるため,新年度に向けて,理事会の態勢を話し合うこと,この1年の事業報告,平成13年度の事業計画等が議題として予定されていた.
 理事会の態勢についての話し合いの中で,理事会や理事長のあり方についての問題提起があり,大変活発な議論が行われた.  やどかりの里が,30年の活動の中組織が大きくなり,メンバー,家族,職員が増える中で,従来の理事会のあり方では十分に理事会の機能が果 たせなくなっていることが明らかになった.
 これまでやどかりの里は,総会が最高決定機関であり,年度内に新しい事業が必要になった場合に,柔軟に対応してきた.現場の判断を尊重し,大きな問題がなければ,理事会で承認されてきた.こうした組織としてのあり方が,やどかりの里の1つの特徴でもあった.
 こうしたあり方を大切にしながらも,大きくなった組織をどのように民主的に運営していくのかが,これからの大きな課題であることが,確認されていった.また,理事長が大学教授となり,やどかりの里の非常勤職員となって4年の間に,徐々に現場と理事長の間に情報の格差が生まれていったこと,大きくなった組織を1人の理事長が掌握していくことの限界も明らかになった.
 そのため,1年間かけて理事会や理事のあり方を見直し,現在のやどかりの里にあった理事会の態勢を検討することになった.
 そして,平成13年度に誕生する新しい理事会を1年間の暫定理事会とすることを決定した.従来の理事の任期は2年であるが,1年後に臨時総会を招集し,理事会の態勢を再度考えることとした.この1年間に理事会の機能やあり方について検討し,設立30年以降のやどかりの里が,いきいきと活動を展開していけるための基盤づくりが,この1年間,理事会に課せられた大きな課題である.

 新しい態勢を理事会では次のように検討した.

理事長  谷中 輝雄
副理事長 土橋 敏孝 孤嶋 圭子
常務理事 増田 一世
理 事  粕谷 慶治  志村 澄子  柳 義子   湯浅 和子 
      香野 英勇 小山 牧男   峯野 武之 島田喜代子 
      浅見 典子  三石麻友美

 やどかりの里は30年という大きな節目に立っている.この5月にはさいたま市が誕生する.そして,平成14年には精神保健福祉のサービスが市町村に移管される.やどかりの里は,新しく誕生するさいたま市とどのような連携をとり,自治体と民間の役割分担をしていったらよいのか,大きな課題を抱えている.
 このような時期に,新旧の理事が一同に顔を揃え,これからのやどかりの里のあり方を話し合った.やどかりの里の今後を考える上で,大変重要な役割を果 たす理事会について議論できたことは,大きな意味があったのではないだろうか.

 


機関紙「やどかり」5月号
(2001.05.15発行)


2001年度活動方針

継続的な系統だった学習と新たな活動展開に
向けて始動するやどかりの里

 1999年,2000年と2年にわたり,メンバーの状態調査,職員の状態調査を行い,その2つの調査結果 に基づき,調査団,メンバー,職員の話し合いが行われた.その中でやどかりの里の課題を明らかにした.
 そして,4月15日,チーフ会議が主体となって「調査から見えてきた課題を考える会」を開催した.参加者は30名,朝の9時から夕方の5時まで,やどかり情報館を会場に行った.ここ数年,やどかりの里の見直しや見通 しを考える際には,チーフ職員で合宿を行い,徹底した議論を行ってきた.しかし,今回のことに関して,やどかりの里の今後にとって重要なことなので,チーフ会議ではメンバーや家族,職員が参加できる場を用意し,開かれた場所で討議したいと考えた.そして,その話し合いの内容が,今年度のやどかりの里の活動方針となっていくことになった.
 話し合いは,社会福祉基礎構造改革が,どのような背景のもとで進んできたのか,どんな内容と意味を持っているのかを確認した.そして,5月1日から「さいたま市」が誕生し,2年後には政令指定都市になること,精神保健福祉法の改正により,2002年より精神保健福祉サービスが市町村に移管になることが,どのような意味があるのかを話し合った.話し合いの中で,これらのことが,自分たちにとって大変身近な問題であり,見過ごしにできないことであると確認された.社会の中の大きな変化を読み取る目を養っていくことの重要性が認識された.これは,継続的に系統だった学習を行っていくことになった.
 さらに,三市の合併により「さいたま市」になっていく中で,住民として,さいたま市に向けて政策提言していく力量 をつけることが急務である.やどかりの里の中で,「さいたま市」との連携のあり方を考え,「さいたま市」における精神保健福祉計画の立案等を目標とするワーキンググループを組織していくことが決定した.このワーキンググループは,チーフ職員が中心になり,やどかりの里のメンバー,職員,家族に呼びかけ,組織化していくこととなった.また一方では,さいたま市内の精神保健福祉活動を行う人たちとのネットワークづくりの必要性が明らかになっていった.そのネットワークの中でも,さいたま市との連携のあり方を考えていくことが必要であることが確認された.
 やどかりの里の活動の普遍化については,今後時間をかけて,やどかりの里が大切にしてきたものを明らかにする努力を行うこととした.
 課題2の,「精神医療の問題」については,6月24日に話し合い,具体的な検討を行う.
 まさに新たな胎動が始まったのである.立場性を越えて,やどかりの里の会員全体で,学習を基盤に新たな行動を起こしていこうということが,今年度の活動の基盤に座った.

 


機関紙「やどかり」6月号
(2001.06.15発行)


第30回 定期総会開催  

  5月19日(土),社団法人やどかりの里第30回通 常定期総会が開催された.例年4月に開催される総会が5月になったのは,やどかりの里の事業規模,会計規模が大きくなり,4月中に決算を行い書類を作成するのが事務的に困難になったのが大きな理由である.
 5月1日現在,やどかりの里の会員数は396名であり,当日は委任状提出者187名,出席者78名で総会は成立した.
 さて今回は30回目という節目の変革を感じさせる大切な総会であった.冒頭の理事長の挨拶も世代交代,そしてやどかりの里の組織の再構築を感じさせるものであった.
 「私は理事会で理事長交代を申し上げた.理由は国との折衝,大学での仕事など外との交渉に大きなエネルギーを注ぎ,大きな組織となったやどかりの里との関わりが薄くなってきたからだ.体力的な問題もある.内部的には生活支援活動を担う職員も経験10年を過ぎ,仕事を任せられるようになった.私は大学で専門家の養成をしたい.この1年は理事長を引き受けるが,大きな時代の変わり目に次の時代を考えながら,やどかりの里の組織運営を1年かけて検討して欲しい.30回の節目,様々なことが議論される重要な1年となる」
 議長は土橋副理事長が務め,以下のように議事進行がなされた.
  第1号議案 平成12年度事業経過報告
  第2号議案 平成12年度収支決算報告
  第3号議案 平成12年度監査報告
  第4号議案 平成13年度役員改選
  第5号議案 平成13年度事業計画案審議
  第6号議案 平成13年度収支予算案審議
  第7号議案 理事会のあり方を考える会の発足について
  第8号議案 やどかりの里の2つの調査から導き出された課題について  
  第1号議案,第2号議案は一括して報告,審議となった.続いて,監事の石井俊子さんより,平成12年度会計は適法に処理されている旨報告があり,第1号議案ならびに第2号議案は承認された.
 次に役員改選の年に当たり理事会より新たな理事態勢が提案された.本紙4月号で報告された案が修正され,湯浅和子理事の辞任が加えられた.また新監事に吉田悦実氏を推薦する旨提案され,審議の結果 第4号議案は承認された.今回は1年間の暫定理事会となる.
 第5号及び第6号議案の平成13年度の事業計画案と収支予算案も一括審議となり担当者より説明があった.質疑応答のあと審議に入り全員一致で承認された.
 今後のやどかりの里の組織にとって重要な,第7号議案の理事会のあり方を考える会の発足についても異議なく承認された.また第8号議案は時間をかけて継続して検討していくべき課題であることが確認され,今後の総会において年度毎に見直していくべき事項であることが承認された.

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大きな転換点に立つやどかりの里
第30回定期総会から見えてきたこと

 やどかりの里の30回目の定期総会が終了した.30年という大きな区切りを実感させられるものであった.  第7号議案として提案された「理事会のあり方を考える会」の発足も,やどかりの里の組織の転換を意識したものである.社団法人は,会員が出席する総会で法人としての方針を決定できるという大きな特徴がある.そして,総会での決定事項を執行するのが理事会である.活動が広がり,構成メンバーも増えたやどかりの里にとって,どのように理事会が機能していったらよいのかを,検討する会である.その中では,やどかりの里の今後の方向性も検討することになるであろう.
 そして,やどかりの里に集う人たちが主体的に法人会員となり,ともに活動を担っていくことが,やどかりの里の大きな特徴でもある.このことにどのような意味があるのか,再度考えていくことも重要であろう.  この,あり方を考える会は,今年度常務理事となった増田を中心に,外部の方にも委員になっていただき,メンバー,家族,職員,現在の理事も加わり,検討することになる.
 もう1つの転換点は,状態調査から導き出された5つの課題を,やどかりの里の総会で承認されたものとして,継続的にやどかりの里の総会で確認していこうという決議である.本紙前号に5点にわたる課題を掲載した.かなり大きな課題であり,すぐに対応しなければならないこと,時間をかけて取り組んでいくことがある.1年ごとにそれらにどのように取り組んでいったのか,振り返りつつ,見通 しを持っていく必要がある.それを定期総会で行っていこうということである.
 さて,最近の本紙では,「状態調査」という言葉がたびたび登場する.しかし,「状態調査」について,説明が不足していたことに会員からの意見で気づかされた.ここで改めて,「状態調査」について触れておきたい.  もともと農業経済の分野で,農家の実態を掴むために始まった取り組みであった.その後,労働組合でのさまざまな問題についても取り組まれ,ここ5年ほどは各地の保健婦活動の現場でも取り組まれている調査である.保健婦活動での取り組みを聞く機会があり,その考え方に共感し,やどかりの里でも自分たちの活動の振り返りや見通 しを持つために取り組めないだろうかと考えたのが,やどかりの里が状態調査に取り組むきっかけであった.共感した点は,「調査する人間が聞きたいことを聞く調査ではなく,話し手が本当に話したい,聞いて欲しいことを中心にすえる調査である」ということであった.
 そして,じっくりと話し合いを行い,その話し合いをいくつかの柱立てに従って整理し,まとめた報告集が編集された.その結果 をもとにして,調査者,被調査者はもとより,やどかりの里の多くの人たちが参加した報告集会,およびその結果 を受けての話し合いから導き出されたのが,前号に掲載した5つの課題であった.(詳細は「響き合う街で」18号,8月発行予定)大変重みのある課題である.
 社会の動きや情勢の変化を見極める力量をつけ,関わる人の思いや考えを集約しながら,やどかりの里の方向性を見出していくことが,これからのやどかりの里の歩み方であろう.そのためには,まず継続した系統だった学習が欠かせない.メンバー,家族,職員が主体的に学習に取り組むことが重要であろう.(増田 一世)

 


機関紙「やどかり」7月号
(2001.07.15発行)


「さいたま市」をどんな街にしたいのか

 「さいたま市」をどんな街にしたいのか  5月1日,「さいたま市」が誕生した.旧浦和,大宮,与野の3市が合併し,人口103万人を超える大都市としてスタートした.5月27日には新しい市長も決まり,2年後の政令指定都市化を目指して,新しい動きが始まった.自治体が合併し,政令市になるということは,県の中に新たにもう1つ県ができるのに等しく,大きな変化である.
  さらに,2002年からは精神保健福祉サービスの市町村移管も控えている.やどかりの里を取り巻く状況が激しい勢いで,変わろうとしている.
 旧3市にまたがって活動展開を行ってきたやどかりの里が,この変化にどう向き合い,どう対応していくのかが問われている.旧3市でそれぞれに策定した障害者計画も新市として新たに策定し直す必要が出てきている.やどかりの里としても,今までの活動の方向性を見直し,今後の方向性を見出すこと,また,さいたま市民として新市の精神保健福祉のビジョンをどう描いていくかということが急務である.やどかりの里のメンバーと職員で,「さいたま市」をどんな街にしたいのかというビジョンづくりを目指したワーキンググループを組織して,具体的な検討を開始した.また,一方で社会の大きな変化を読み取る目を養っていくための学習会も始めた.
 もちろん「さいたま市」に向けての動きは,やどかりの里だけで行うことではない.このようなやどかりの里内部での取り組みの一方で,市内の精神保健福祉活動を行う関係団体とも連携し,協力しながら,「さいたま市」に働きかけを行うことが必要である.そのための準備が進行中だ.まず,市内の各生活支援センターの施設長を中心に,市内の関係団体の連携をどう作っていくか,そして「さいたま市」に向けてどう働きかけていくかについて協議を行った.その上で,関係団体にも呼び掛け,「さいたま市」に向けて具体的にどのような働きかけを行うのか検討を始めている.今後,できるだけ早い段階で関係団体の声をまとめ上げ「さいたま市」に届ける予定である.
 その際忘れてはならないことは,当事者の声や,現場の声を政策に反映させていくことである.加えて,関係団体それぞれの立場性の違いを越え「さいたま市」の住民として望ましい精神保健福祉のあり方を提言できるかということも重要である.住民主体の政策提言をしていくためには,関係団体が協力して情報を収集し,継続して学習を深めていくことが必要であろう.これは時間のかかることではあるが,市の動きも見極めながら進めていかなくてはならず,急務である.
 いずれにせよ,「さいたま市」はスタートした.今後大きな変化が「待ったなし」の状況で次々に起こってくる.やどかりの里の私たちとしては,その動きの本質を見極めつつ,日常の活動で大切にしてきた価値を「さいたま市」の中で実現化していくことが,求められているのである.
 

 


機関紙「やどかり」8月号
(2001.08.15発行)



それぞれの立場性を超えた協働の取り組みに向けて

 ここ最近,やどかりの里の様々な活動において,職員とメンバーとの協働を意識した活動が展開され始めている.こうした動きの大きなきっかけとなったのが,カナダのオンタリオ州で実現されているコンシューマーのイニシアティブの取り組みについて学んだことだった.オンタリオ州では,精神保健福祉施策の政策決定の際に専門職と当事者の協働の施策づくりが実現されている.
 平成12年1月には,カナダから専門職と当事者の方々を招き学習会を開いた.こうした専門職と当事者の協働での取り組みの実践から,やどかりの里は多くのことを学び,活動や運営を見直すきっかけにもなった.そして,職員主導の取り組みから,職員とメンバーとの協働の活動づくりへの転換を意識した活動への展開をはかりつつある.それぞれの立場性を超えた協働の取り組みは,今後社会の中の様々な場面 で実現されていくことが課題だろう.そのひとつが,政策決定の際に住民と行政との協働を実現していくことである.
 そもそも政策は,人間が生まれてから死ぬまでの暮らしを支える重要な柱である.そして,誰にとってもあたりまえの人間としての権利が政策には根付いていなければならない.しかし現在の政策が,本当に私たちが生まれてから死ぬ までの暮らしを有効に支えるものになっているのだろうか.政策決定の際,誰のための政策かということが置き去りにされていないだろうか.住民の暮らしに欠かせない政策が,本当に住民にとって有効なものとして,また一人一人の人間があたりまえに大切にされる政策となっていくことが重要だろう.
 これからの私たちの取り組みの中で,精神障害者も専門職もともにひとりの住民として精神保健福祉のビジョンを描き,政策決定への参画を実現していくことが課題だろう.人間一人一人の暮らしを有効に支えてこそ生きた政策と言える.そして様々な政策決定までの過程において行政と住民との協働を実現していくことが重要であろう.それは精神保健福祉施策においても例外ではない.  来る9月には,専門職と当事者の協働の取り組みなどを含め,その実際を学習する目的で数名の職員とメンバーがカナダのトロントへ出かける.その準備のために,日本の精神保健の歴史,精神障害者の人権などについての学習を重ねてきた.それぞれの国には独自の文化と歴史がある.そのことを踏まえ,これからの日本の精神保健福祉において,政策決定の際の自治体と住民との協働を実現していくこと,具体的には当事者の政策決定への参画を実現していくことが重要な課題となるだろう.私たちの暮らす街を本当に暮らしやすい街としていく取り組みはまだ始まったばかりである.


機関紙「やどかり」9月号
(2001.09.15発行)



里祭りから見るやどかりの里の変遷

 8月9日(木)4時から6時まで,会館ホールにて3年ぶりにチーフ会議主催で里祭が開催され,約60名の参加があった.前半の「やどかりの里と私」という討論会では,長く利用しているメンバーから,やどかりの里を利用した頃の思い出とこれからの要望が,家族からは「定年になったら何かお手伝いをしたい」などの発言があった.また,後半の会食の合間には,余り顔を会わせることのないメンバーたちの自己紹介があり,新しい出会いが生まれ,2時間に亘る第16回里祭は終了した.
 やどかりの里30周年記念行事により,里祭が2年間開催されていなかったため,里祭の存在を知らないメンバー,職員がいること.また,近年各生活支援センターで利用登録が可能なため,そのエリアの作業所やグループホームとの交流はあるものの,社団法人やどかりの里の本部や社会復帰施設会館ホールを訪れたことのないメンバーもいること.そして,あらためてやどかりの里の法人会員について考えていこうという思いを込めて里祭を開催することになった.
 ここで,里祭についての歴史を機関紙「やどかり」から辿ってみよう.開催の有無はその時々のやどかりの里の状況と共にあった.やどかりの里は発足5年目,1975年に財政危機に見舞われた.この時メンバーから自分たちも社団法人の会員になろうという声があがった.同時に人手不足を法人会員で委員会を組織し,会員活動で乗り切ろうという動きが起こった.第1回の里祭は1977年5月,このような時期に開催された.主催がレク委員会,協賛がバザー委員会,メンバー家族の会,朋友の会,爽風会,スタッフ,後援がやどかりの里と記載されているところからも,全ての会員が一体となってやどかりの里を担っていこうとした行事であったようだ.このような動きは1979年まで続いた.1980年から1982年まではやどかりの里10周年記念行事や,財政危機による会員獲得の記事が機関紙を埋め,里祭は開催されていない.1983年から1985年までは爽風会,朋友の会,浜砂会が共に過ごす内輪の会として行なわれ,浜砂会の方々に母の日を兼ねてカーネーションが贈られた.1986年から1989年までは「外なる交流」と称し,外部の当事者の会を招き,セミナーを中心に据えた里祭が開催されている.その間,1988年は社会復帰施設を建てるための一坪運動や保健文化賞受賞記念講演会のため中止となっている.その後,1992年再開.やどかりの里25周年記念式典があった1995年を除いて@KN1998@KN年まで継続.内容はソフトボール対抗試合や文化祭に変化.同時に,運営はやどかりの里が地域に広がったことを示すように,各部署がそれぞれ受け持ち,創意工夫を凝らすお祭りになってきている.
 里祭は社団法人会員の集う祭典である.やどかりの里が社団法人として運営されている意味を里祭の歴史を辿ることから,あらためて考える契機になれば幸いである.

 


機関紙「やどかり」10月号
(2001.10.15発行)



コンシューマーのイニシアティブの実際に触れて
カナダトロントでの刺激的な体験

 カナダのオンタリオ州で展開されているコンシューマーのイニシアティブについて,昨年から学習を続けてきた.そして,ファイザー製薬からの助成金を受け,9月11日から23日まで,実際にオンタリオ州トロントを訪れ,実際の活動に触れ,その考え方を聞く機会を持つことができた.
 しかし,実際に成田空港を出発し,オンタリオ州に到着したのは,9月16日の未明であった.これはアメリカで起こったテロリストによるハイジャックのためで,事件が起こった時刻に飛行機に乗り合わせていた私たちは,ニューヨークに到着する予定がアラスカ州アンカレッジに緊急着陸した.この間のことは次ページからの報告に譲るが,アンカレッジで過ごした数日,そしてトロントで過ごした数日,ともにさまざまなことを考えさせられる2週間であった.
 さて,この研修旅行はカナダのコンシューマーのイニシアティブを学びつつ,日本の精神保健福祉活動について考える学習グループが基盤になっている.そのグループの中から3人のメンバーと7人の職員が参加した.(やどかり出版顧問の西村氏の夫人も同行)そして,トロントでのさまざまな訪問や会合を,現地のアディクションとメンタルヘルスセンターのジョン=トレーナー氏と交渉しながらコーディネートをして下さったのが,木村真理子(関西学院大学)さんだった.この旅行にも同行し,私たちの研修を助けていただいた.全員で12名のグループであった.3人のメンバーは,海外での研修を受けることが,自分自身の体調や将来にとってどんな意味があるのか慎重に考え,参加を決定した.職員は,やどかりの里の方向性,さいたま市の中でやどかりの里がどのような役割を取っていくのか,あるいは日本の精神保健福祉活動のビジョンを描きたいという思いがあった.
 トロントに滞在した5日間は,大変刺激的な経験の連続であった.オンタリオ州の精神保健政策にとっても,コンシューマーのイニシアティブを基盤にした政策は革命であったという.そして,コンシューマーや専門職の意識を変え,実際に事業化が進められることで,そのことの有効性が確かめられてきた.今ではさまざまな組織や活動の理事会にコンシューマーが参加し,コンシューマーが運営するビジネスが盛んになってきている.10年の歳月がかかっている.日本の長期入院者の多い現状,精神障害者であるということで,さまざまな機会が失われていく現実.その現実に対しての憤りを感じた5日間でもあった.私たちが気づいたことを,次なるアクションにどうつなげていくのか,これからの課題は大きい

トロントでの研修を終えて
コンシューマーの力を信じ,さまざまな機会を作り出すこと

 9月22日早朝,トロントでの研修を終えた私たち11人は,ノースウエストで帰国する木村さんと別 れ,トロントからアトランタに向かい,アトランタでデルタ55便成田行きに乗り込み,いまその機上にいる.
 この2週間を振り返り,ご報告したい.目的はもちろんトロントでの学習であったが,トロントに行き着くまでの経験も,さまざまな意味のある経験であった.
 想像もしなかったことでアンカレッジに降り立った時,私たちはとても大きな不安を抱えていた.アンカレッジの空港のオフィスに映し出されていた航空機がツインタワーに飛び込み,ビルもろとも炎上するシーンは,とても現実のこととは思えなかった.先行きの見えない不安は大きかった.アメリカとカナダの飛行場が封鎖され,一切の航空機がストップしていた.昼食を求めて,アンカレッジの街に出ると,頭の上を軍用機が飛んでいった.戦争が始まるのだろうかと気持ちが重たくなった.
 結局アンカレッジには2泊したのだが,通信がままならないこと,十分な情報のないこと,そのためにどういう判断をしたらいいのか,大変しんどい2日間を過ごすことになった.グループメンバーのほとんどが,できればここから引き返して,日本に帰りたいという思いを抱いていた.しかし,日本に帰国する便のチケットを手に入れるには,アンカレッジでさらにとどまらなくてはならないこと.やっとのことで連絡が取れた木村さんとの話し合いで,ジョン=トレーナーさんが到着が遅くなる分,研修日程を延ばすことを提案された.このことにとても勇気づけられ,後ろに戻るよりも,予定を前に進めることを選んだ.3日目の朝ロサンジェルス行きの飛行機が飛ぶことになり,ロサンジェルスに向かった.しかし,ロサンジェルスから先の見通 しはなく,不安は強かった.この日どこに泊まれるのか,トロントには安全に行かれるのか,私たちは大変高いストレス状態にあった.アンカレッジのホテルを朝7時前に出発し,何とかロサンジェルスのホテルにたどり着いたのは,22時を回っていた.デルタのカウンターで長時間並び,やっとのことで手に入れたチケットは2日後のシンシナティ乗換えのトロント行きだった.ロサンジェルスのホテルで,私たちがグループとして,どう行動していくのかの話し合いを持った.誰かが決めるのではなく,参加者の合意に基づく決定であるべきだという問題意識からだ.この話し合いは大変重要であった.危機に遭遇し,この危機にどう立ち向かい,対処していこうとするのか,参加者の共通 認識にする意味があった.
 そして,9月16日未明にトロントに到着した.やっとほっと人心地がついた.木村さんも何とかバンクーバーからトロントに到着し,やっと会うことができた.ジョン=トレーナーさんがホテルに出向いてくれて,5日間の研修の打ち合わせを行った.
   トロントでの5日間の日程は以下の通りである.見学先はいずれも非営利の民間組織である.
9月17日(月) 午前 ダンダス・オーサーパートナーシップというハウジングの見学.4つの機関が連携して行っている住居の活動.
午後 ジョン=トレーナーさんの働くアディクションとメンタルヘルスセンターを訪れ,ジョンさんからオンタリオ州の精神保健政策の大枠の説明を受ける.2時からは,木村さんと香野さん,私が日本の精神保健活動の現状ややどかりの里の実践について発表した.50人近くの人が熱心に聞いてくださり,時間いっぱいまで質問が続いた.
9月18日(火) 午前 リジェネレーションハウスの訪問.やはりハウジングの活動で,1977年に精神科の病院が閉鎖になったことで始まった活動で歴史がある.重症の患者さんたちが管理された生活から,自立的な暮らしに移っていくプロセスを伺った.前日の住居の活動でもそうだが,こうした活動の運営を決定する理事会には,必ずコンシューマーが複数参加している.
午後 CSDI(コンシューマー・サバイバー・デベロップメント・イニシアティブ)の事務所を訪問した.ここではコンシューマーであるマニー=シェパードさんが説明をしてくださった.コンシューマーのイニシアティブがどのように発展してきたのか伺った.
9月19日(水) 午前 メトロCMHAを訪問.CMHA(カナディアン・メンタルヘルス・アソシエーション)のトロント市の支部である.ここでは直接的サービスとメンタルヘルスに関するヘルスプロモーションが行われている.
午後 オークセンター・ナイアガラを訪問.ここはクラブハウスモデルの1つである.そして,今回唯一の観光でナイアガラの滝に行く.霧の乙女号という観光船に乗り,滝の目前まで行く.滝のしぶきでびしょ濡れになるが,楽しい時間をすごした.
9月20日(木) 午前 CMHAのナショナルオフィス.ここで日本にも来て下さったボニー=ペイプさんと再会.ここで展開されている雇用・早期発見,早期治療・高等教育などの事業について,それぞれの担当者が説明してくれた.
午後 サウンドタイムズという活動を訪問.活動内容はクラブハウスモデルに似ている.職員自身もホームレスを経験したことのあるコンシューマーであり,普通 のサービスを受けられない人,利用したい人は誰でも利用でき,過去は問わない.
夜 やどかりの里の香野英勇さん,辰村泰治さん,宗野政美さんとCSDIで働くコンシューマー3人が交流を目的とした夕食会を開いた.
9月21日(金) 午前 4日間の研修を振り返っての12人での話し合いを行った.午後の最後の話し合いで何を明らかにしていきたいのかということを確認する意味もあった.
午後 アディクションとメンタルヘルスセンターで,ジョン=トレーナーさんのコーディーネートによる話し合い.政府のシニアスタッフ,雇用のプログラムの担当者,センターの職員など,10数人が参加してくださり,私たちの質問に答えてくださった.
 限られた紙面では,私たちの受けた刺激をお伝えできない.これから何回かにわたって,参加者の感想を伝えたい.この5日間,トロントでの活動を鏡にして,もう一度活動を振り返ることになった.そして,コンシューマーの力を信じ,さまざまな機会を作り出していくことの重要性を感じた.カナダも財政は厳しい.政策にどれだけ住民の声を反映させていくのか.「人間中心」の政策をどう展開していくのか.これは住民自身の力も問われるのだ.アトランタから13時間に及ぶフライト,まもなく成田である.帰国後,振り返りの機会を持ち,この経験をどう報告するかを検討する.私たちの経験を多くの人と共有し,これからの日本の精神保健活動が人間中心に展開されていくために生かしていきたい.
(増田 一世)

 


機関紙「やどかり」11月号
(2001.11.15発行)



生活支援活動の転換期を迎えて

 今やどかりの里の生活支援活動は,さいたま市の一資源としての活動へと転換期を迎えている.自分たちの暮らす地域を足場にして再度やどかりの里の生活支援活動を見直し,ビジョンをつくっていくことの必要性に迫られているのだ.やどかりの里では,上半期をかけて生活支援活動の見直しを行ってきた.話し合いの大きな柱は,30年間やどかりの里が培ってきた理念や価値の普遍化をはかりながら,いかに住民に必要な精神保健福祉活動をつくっていくかということ,そしてその際,民間のやどかりの里がさいたま市の一資源として果 たすべき役割は何かということである.
 年度始めには,必要な人が必要な時に相談しやすい態勢にするため,生活支援センター登録料を廃止し,契約内容を見直し,利用相談窓口を各資源でも受けられるようにした.そして,半年間の見直しから5つの課題が明らかになった.1)在宅ケア,2)就労支援,3)思春期の子どもの問題の課題である.1つ目の在宅ケアの課題は,今まで行ってきた長期入院者への生活支援やサービスの開拓に加え,本人や家族の高齢化,身体的な機能低下などに伴って本人の日常の暮らしに変化が出てきた場合の地域での暮らしを支える環境づくりである.その際,ホームヘルプサービスなどの検討を視野に入れ,新しいサービスや支援の態勢をつくっていくことが課題であろう.
 2つ目の就労支援の課題は,働く場での支援や情報提供と共に,地域に働く場の選択肢を増やすこと,すでにある資源やサービスの見直しと新たな地域のネットワークづくりを進めていくことである.
 3つ目は思春期の子どもの問題の課題である.相談者の中には不登校やいじめを抱え安心して居られる場がない人が多い.こうした背景には今の社会や教育の問題もある.まずは現状の把握と共に,教育機関や関係機関との連携をつくり情報収集していくことが課題である.
 次に,4)緊急対応の態勢,5)援護寮の態勢の見直しである.やどかりの里は生活支援センターと援護寮が連携して24時間の緊急対応の態勢をつくっている.しかし,日・月曜日の夜間は,職員が自宅で緊急連絡を受けている.現在では登録者が180名弱と規模も大きくなり見直しが必要になってきた.そして来年度から居宅生活支援事業が市の事業となれば,やどかりの里の援護寮はさいたま市で唯一の宿泊機能をもつ資源となる.今後緊急対応の態勢を見直すと共に,さいたま市の一資源としての援護寮の機能を見直し,新たな態勢をつくっていかなくてはならない.
 これらは新しく始める取り組みで,現在生活支援態勢の再編も検討中である.時代の流れと共に,「やどかりの里らしさ」を失わず生活支援活動の転換を図っていく必要性に迫られている.



機関紙「やどかり」12月号
(2001.12.15発行)



精神保健福祉士資格を考える
〜実習教育から見えてきたこと〜

 精神保健福祉士の国家資格ができて4年.やどかりの里でも,平成11年度から学生の実習を積極的に受け入れ,将来精神保健福祉活動を担っていくだろう学生への実習教育に取り組んできた.今年度も,既に10名の学生がやどかりの里での実習を終えている.
 やどかりの里が実習の中で大切にしてきたことは,技術や知識が先行するのではなく,「人として」相手と出会い,「対話」を通 して様々な「気づき」を得て,人や組織に対する理解を深めていくことである.しかし,この大切にしていることを学生に伝えていく難しさを実感した3年間でもあった.
 今の学生の多くは,「国家資格がほしい」という思いが実習目的の中心にあることが多い.しかしその反面 ,「何のために資格を取るのか」「自分がどう生きようとしているのか」という考えを明確にもっている学生は少ない.不安定な現代社会ゆえ,資格をもつことで将来の暮らしに安心感をもてるような錯覚をおこすのだろうか.しかし,資格があるから現場で役立つ職員になるのではない.人と相対していく上で,資格があるかないかはさほど重要ではないのだ.「何を考えている人なのか」「どう生きようとしている人なのか」が,互いに分かり合えることが重要なのである.学生が様々な機会を通 して,自分に正直に,人として相対することから学ぶことの重要性をいかに実感できるかが,その後の専門職としての成長においても重要な鍵になる.
 しかし,多くの学生と接して感じる危惧は,資格をもつことによって自分を隠し,鎧をかぶり,相手と向き合うことから学ぶ大切さを実感することから遠ざかっていくのではないか,ということである.これは学生個人に責任があるのではなく,学生たち自身がひとりの人間として尊重された体験が少ないのかもしれない.閉塞感漂う日本の教育構造の中で育った彼らにとって,自分をさらけ出し,人と相対することへの恐れは簡単にはぬ ぐえないのかもしれない.
 私たちも,学生と相対する中で彼らの価値観を尊重しつつ将来の専門職として大切にすべき価値を伝えていかなければならない.学生と出会って感じた危機感は,私たちを取り巻く日本の教育構造,社会のあり様への危機感に繋がることでもある.どのような専門職がこれからの活動に必要なのか,大学と共有していくことも重要だろう.
 ある職員が,専門性について「価値のないところに技術を使えばそれは相手を傷つける武器になる」と表現したことがある.価値とは人間の尊厳だろう.その「価値」を伝えていくためにどのような実習を担っていけばいいのか,まだまだ模索中である.
 専門職は,自分たちのもつ専門性がいつでも相手を傷つける武器にもなり得ること,そしてそれは,人間の尊厳,即ち人権侵害の武器にもなり得るものなのだ,ということを,専門職として,ひとりの人間として,自覚していかなければならない.ひとりひとりの人間の尊厳を大切にする専門職である時,はじめて資格をもつ意味が出てくるのではないだろうか.

 


機関紙「やどかり」1月号
(2002.01.15発行)



平成14年 精神保健福祉活動が変わる
〜市町村の時代〜


理事長 谷中輝雄

 平成14年には精神保健福祉の活動は市町村を中心にした活動になります.
 これは私の長い間の願望でした.今から15年前に「精神障害者の社会復帰に関する意見」で市町村の役割の明確化が求められました.しかし残念ながら具体的な施策としては取り上げられませんでした.当時は社会復帰の促進のため社会復帰施設建設が認められ,そのための財政負担と運営の一端を担ってもらいたいという要望でもあったのでした.財政事情もあり市町村が精神保健福祉の活動は担えず,都道府県の役割にとどまったのでした.その結果 例えば社会復帰施設の運営費は国1/2,県1/4となり,1/4は設置者負担となりました.これが我々社会復帰施設を運営するものの大きな負担となりました.
 やどかりの里も社会復帰施設を建設したものの,この1/4設置者負担(年間1,000万)に苦しみ,資金調達に走り回ったときがありました.
 その後グループホームが事業として認められたり,埼玉県の小規模作業所の運営費補助が増額(年間90万が400万に)されたりして活動がしやすくなりました.
 やどかりの里では地域生活支援事業を認めてもらいたいために,運営費補助がない中で活動を開始いたしました.これもまた大変なことで,いつ事業が認められるかわからない中で実体を作ろうと努力いたしました.ここでも資金面 での困難がついてまわりました.幸い3年目には事業として認められました.そしてやどかりの里では3か所の地域生活支援センターが補助金対象となりました.
 最近,この地域生活支援センターがにわかに注目され始めました.平成15年度からのケアマネージメントの導入をめぐって各地で論議がされ始まりました.市町村の窓口でこのケアマネージメントを実施することになり,そのために市町村は地域生活支援センターに委託をして実施するということが現実味を帯びて検討し始めたのです.この地域生活支援センターは市町村が直営のもの,社会福祉法人等に委託するもの,NPOや作業所運営委員会等市町村長が認めれば運営できることに向けて現在改正されようとしております.
 市町村がやる気を出してくれれば,各地に生活支援センターが増え,在宅の精神障害者の拠り所となることでしょう.また長期入院者も地域で生活が可能になることでしょう.やどかりの里での実践がようやく陽の目を見る時代となりました.全国各地に地域生活支援センターができ始めていけば世の中が変わります.市町村では身体,知的,精神の3障害を統合し,さらには高齢者へのサービスとの整合性も検討し,地域におけるサービスメニューを整えることに努力しなければならないでしょう.こうして総合的な福祉サービスが提供できる時代に変わろうとしております.
 今後のやどかりの里の活動を始め,全国各地の活動を見守ることにしたいと思います.
 祈るような気持ちを込めて.


機関紙「やどかり」2月号
(2002.02.15発行)



医療モデルから地域モデルへの転換を
住民の声を自治体に届けることから

 今年度のやどかりの里は,メンバーと職員が,これからのやどかりの里の方向性や,視野を広くして社会全体の動きに関心をもちながら,学習していくことに活動のエネルギーを注いできた.継続的に学習を積み重ねるグループが生まれ,その1つが本紙でも報告してきたカナダのオンタリオ州のコンシューマーのイニシアティブについて学ぶグループである.現地視察も含めた学習を始めて1年が経過した.
 現在,トロントでの視察で経験してきたことをもう一度話し合いながら,この1年間の学習で何が見えてきたのか,気づいたことをまとめる作業に入っている.
 ここでは,これからのやどかりの里の方向性やこれから大きく動き出すであろう精神保健福祉活動の行方と重ねながら報告したい.
 この学習の最初に行ったことは,日本における精神障害者の処遇の歴史だった.いかに精神障害者が人間としてみなされてこなかったのかということを再確認した.そして,戦後精神病院が増え,精神病院が精神障害者の生活を抱え込む時代が長く続く.一方カナダでも精神病院が精神障害者の処遇の中心であった時代はあったが,1960年代に地域ケアの重要性が認識されている.そして,1974年には病院中心処遇から脱却し,地域精神保健における代替的方法(オルタナティブ)が検討され,利用者が主体性を発揮することを基盤にしたプログラムが作られていく.
 しかし,日本の精神病院の平均入院日数を見ると,この大きな転換点が日本にはいまだ訪れていない.精神障害者の処遇が根本的に変わらないのは,ここに大きな問題がある.
 精神医療の問題を社会の問題と捉え,変革を促していくこと,そのためには私たち1人1人の人権意識が問われる.  そして,この長いこと変わらない大きな問題を抱えながら,精神保健福祉の窓口が市町村に移り,新しい局面 を迎える.まさに住民自治が問われる.精神保健福祉業務の市町村移管は,国の政策決定によるものである.しかし,私たちの暮らしの基盤となる自治体,住民の声が一番身近に届く自治体が,1人1人の住民を大切にする施策を展開するなら,まさに市町村移管が,医療モデルから地域モデルへの転換の大きなきっかけとなる可能性がある.
 1988年にオンタリオ州政府が発表した「グラハムレポート」では次のように記されている.
「本当の意味での利用者主体になるには,精神障害者のニーズを本質的に理解しなくてはならないし,政策決定過程への利用者の参画を支援するには,具体的な方法が位 置づけられなくてはならない」
 精神障害者の心の底からの願いや思いを,彼らの肉声で自治体に届けることから始めたい.


機関紙「やどかり」3月号
(2002.03.15発行)



やどかりの里は5つの課題にどう取り組んできたのか
今年度の見直しとこれからの見通し

 第30回やどかりの里の定期総会(2001年5月)で,2つの状態調査(詳細は『響き合う街で』18号 やどかり出版)で導き出した課題をやどかりの里の課題として取り組むことを決議した.チーフ会議では,いずれも大きな課題のため,課題に取り組むにしても1つ1つの課題について話し合って,共通 認識を持つ必要があるだろうと考え,そこで,この1年間に4回にわたる話し合いの機会を設けた.
 4月15日(日)課題1「学習を進めていく課題」,課題5「やどかりの里が30年かけて築いてきた価値を普遍化し,競争社会ではない社会を作っていく課題」
 6月24日(日)課題2「精神医療に関する課題」
 11月11日(日)課題3「働き場所を広げていく課題」,課題4「財政基盤を拡充していく課題」
 2002年3月7日(木)1年間かけて話し合ってきた5つの課題を整理し,共有する時間を設けた.さらに今後の課題への取り組みについて検討した.
 3月7日の話し合いの前に5つの課題についての話し合いを要約した記録が事前にやどかりの里の各部署で配布された.そして,1つ1つを振り返りながら全体討論を行った.
 後半では,これからの方向性について確認されていった.
 この1年間,5つの課題を時間をかけて確認し行動する中で,5つの課題が相互に関連していることが確認できた.そして,この5つの課題を1人1人が統合して捉えていく努力が必要であろうと指摘された.そして,この課題は状態調査から導き出され,それぞれの生きざまの中でみえてきたことなので,より身近にこの課題を捉え,日常の活動の中で意識していくことが必要であることも話し合われた.
 そして,これからは5つの課題を下敷きにしながら,定期的に活動の見直しをしていくことが確認された.その中で,取り組みが進まない部分も明らかになり,自分たちの実践のありようも整理されることになるであろう.そして,5つの課題を下敷きにした活動の見直しについても,やどかりの里の全体の問題として位 置づけるために総会で議論し,やどかりの里の活動として位置づけていくことが必要だという意見もあり,参加者の同意を得た.
 また一方で,状態調査はやどかりの里の実態の中から生まれてきたものであり,導き出された5つの課題は現場の中に介在している問題ばかりである.今後は総論的に押さえられた各課題をそれぞれの現場で再点検し,やどかりの里の内部の充実を図ることの大切さが指摘された.

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