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記事>
理事長の交代と「やどかりの里」
土橋敏孝(やどかりの里理事長)
平成14年5月25日,「やどかりの里」の総会を迎え,1年間の暫定理事会による運営から正規の理事会へとバトンタッチされた.この1年間は,谷中理事長の「理事長を交代したい」との意向を受けて「理事会のあり方」を考えてきた1年でもあった.選出された理事の個々の力や「やどかりの里」を利用するメンバ−の思いが最大限生かせる民主的なものにしたいという願いも込められていた.
昭和45年に始まった「やどかりの里」も32年の歳月が流れ,精神障害者や家族の方々にとって地域の中で適切な支援を受けながら「あたりまえの生活」をする条件が整いつつある.加えて,いま「やどかりの里」が存在するさいたま市中川は,かつての大宮市中川という位
置ではなく,これから発足する区の一部に所属する.「やどかりの里」はいくつかの区にまたがって存在し,合併した「さいたま市」の今後の精神障害者を始めとする障害者福祉の担い手として期待されよう.このような時代や現状の変化に対応する取り組みが新しい理事会に求められている.
さいたま市では,現在「障害者計画」が新たに策定されつつある.三障害の連携と障害を持つ者が求める保健・医療・福祉の統合されたプランが必要である.そのためにやどかりの里では,当事者であるメンバ−も参加し,プランへの反映を図るべく努力をしている.このような計画づくりは市民の願いが込もったものとして関心を高めることが重要である.
ある会合で,長野県北信圏障害者生活支援センタ−所長として活躍されている福岡寿さんが,「障害を持つ子どもを抱えているご両親の生活を生活支援センタ−を通
して支える中で,ご両親が変化し,再び自分達の人生を組み立て直す努力をされるようになった」と報告された.そして,「福祉の専門家は,課題を抱えて生きている人たちの願いに沿いながら課題を解決するお手伝いをする中で,相手が自分の人生を再構築していく力を生み出すものでなくてはならない」と.このことは,単なるサ−ビスの提供者ではなく,人生を一緒に考え課題を抱えている人の思いや願いを,改めて取り戻すための力となることであろう.
さて,「やどかりの里」も,精神障害で苦しみ悩むメンバーが,病院を退院し,地域社会の中で自分に相応しい生活を取り戻すため,その人に必要なサ−ビスを地域社会に用意し,サポ―ト体制を確立してきた.それらは精神保健福祉法にも取り込まれ,日本全体の精神保健福祉の底上げに役立ってきたといえよう.このような努力の中30周年を迎えて,残されている課題と新しい時代に相応しい取り組みの課題を明らかにしてきた.大切なことは歴史の持つ実績を評価しつつも,現状を確認し対応すると共に,さらなるエネルギ−を吸収して前進を図ることである.我々の願いは,適切な医療の提供により障害を持っても地域社会において「あたりまえの生活」が可能な社会の実現である.ご協力いただきたい.
<第3木曜会報告>
さいたま市障害者計画に向けた情報共有
現在,さいたま市では障害者計画を策定中である.当事者の声を反映すべく,アンケート調査がおこなわれたが,質問内容が画一的で,障害をかかえながら暮らしている実態は明らかにならなかった.その後,6月上旬にさいたま市から急遽ヒアリング調査の申し入れがあり,事前に調査票の提出を依頼された.
ヒアリング調査に向け,やどかりの里では6月6日に話し合いを急遽行った.その後,職員,家族,そしてメンバーの間でそれぞれに話し合いの時間を持った.そこで,自分たちが暮らすさいたま市において,障害者施策を考える時,何を大切にしていくべきなのか,具体的な要望や課題が話し合われた.それらの話し合いと状態調査から導き出された5つの課題をもとに,やどかりの里として,障害者計画に取り入れて欲しい課題や取り組みを盛り込んだ調査票が増田さんによって文章にまとめられ提出された.
6月20日の第三木曜会ではヒアリング調査にむけての内部での会議や,他の障害者団体の様子など,さいたま市の障害者計画にむけての情報の共有と今後の流れが確認された.
メンバーからは「作業所や授産施設に通勤する時の交通費補助」「障害者手帳を利用して交通
機関が減免になるようにしてほしい」「生活保護の場合,収入申告をすると支給額が減ってしまい,働く意欲がなくなる.働くことを勧めるなら,収入を保証して欲しい」など経済保障を願う意見が多かった.
職員からは,「今もなお長期入院をしている人たちが地域で暮らすための支援」「精神障害者の高齢化への生活支援」「働く場の確保と拡充」「思春期のさまざまな葛藤を抱える人たちへの支援」「行政の責任として公に相談窓口を設置すること,関係機関が集まり検討する場を設置して欲しい」という話がされた.また,家族の思いとして「安心して精神医療をうけられる医療の質の向上」も挙げられた.その他にも「入院中から退院後の暮らしのレールをひいてくれると助かる」「公の機関で相談できる所があればいい」との意見もでた.
他の障害者団体の中には,ヒアリングの時間を延ばしてもらえるように交渉したり,ありのままの姿をみてもらえるように市の職員の方に自分たちの施設に出向いてきてもらってヒアリングを行うよう交渉した所もあるようだ.
6月28日にさいたま市の職員がやどかりの里に来て,ヒアリング調査が行われる.メンバー2名,家族1名,職員2名で応じる.傍聴者に人数制限はない.市の職員の方には私たちの思いを充分に理解し持ち帰ってもらい,生の声を障害者計画に反映させてもらいたい.
ヒアリング調査の申し入れがあり,実際に行われるまで1ヶ月ほどである.さいたま市の障害者計画のみならず,日本ではものすごいスピードであらゆることが決定されているような危機感を感じる.そこに住民の意見は汲みこまれているのか不安になる.しかし,今回は急とは言え,やどかりの里として意見を言うチャンスをもらった.さいたま市と一緒に障害者施策を考えていく第一歩になればいいと思う.現場の声を盛り込んでもらい,住民ひとりひとりが暮らしやすいさいたま市になるような障害者計画ができることを切に願っている.
(福田むつみ)
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