医療モデルから地域モデルへの転換を
住民の声を自治体に届けることから
今年度のやどかりの里は,メンバーと職員が,これからのやどかりの里の方向性や,視野を広くして社会全体の動きに関心をもちながら,学習していくことに活動のエネルギーを注いできた.継続的に学習を積み重ねるグループが生まれ,その1つが本紙でも報告してきたカナダのオンタリオ州のコンシューマーのイニシアティブについて学ぶグループである.現地視察も含めた学習を始めて1年が経過した.
現在,トロントでの視察で経験してきたことをもう一度話し合いながら,この1年間の学習で何が見えてきたのか,気づいたことをまとめる作業に入っている.
ここでは,これからのやどかりの里の方向性やこれから大きく動き出すであろう精神保健福祉活動の行方と重ねながら報告したい.
この学習の最初に行ったことは,日本における精神障害者の処遇の歴史だった.いかに精神障害者が人間としてみなされてこなかったのかということを再確認した.そして,戦後精神病院が増え,精神病院が精神障害者の生活を抱え込む時代が長く続く.一方カナダでも精神病院が精神障害者の処遇の中心であった時代はあったが,1960年代に地域ケアの重要性が認識されている.そして,1974年には病院中心処遇から脱却し,地域精神保健における代替的方法(オルタナティブ)が検討され,利用者が主体性を発揮することを基盤にしたプログラムが作られていく.
しかし,日本の精神病院の平均入院日数を見ると,この大きな転換点が日本にはいまだ訪れていない.精神障害者の処遇が根本的に変わらないのは,ここに大きな問題がある.
精神医療の問題を社会の問題と捉え,変革を促していくこと,そのためには私たち1人1人の人権意識が問われる.
そして,この長いこと変わらない大きな問題を抱えながら,精神保健福祉の窓口が市町村に移り,新しい局面
を迎える.まさに住民自治が問われる.精神保健福祉業務の市町村移管は,国の政策決定によるものである.しかし,私たちの暮らしの基盤となる自治体,住民の声が一番身近に届く自治体が,1人1人の住民を大切にする施策を展開するなら,まさに市町村移管が,医療モデルから地域モデルへの転換の大きなきっかけとなる可能性がある.
1988年にオンタリオ州政府が発表した「グラハムレポート」では次のように記されている.
「本当の意味での利用者主体になるには,精神障害者のニーズを本質的に理解しなくてはならないし,政策決定過程への利用者の参画を支援するには,具体的な方法が位
置づけられなくてはならない」
精神障害者の心の底からの願いや思いを,彼らの肉声で自治体に届けることから始めたい.