-TOPICS-

機関紙「やどかり」2月号
(2002.02.15発行)

<1面 記事>

医療モデルから地域モデルへの転換を
住民の声を自治体に届けることから

 今年度のやどかりの里は,メンバーと職員が,これからのやどかりの里の方向性や,視野を広くして社会全体の動きに関心をもちながら,学習していくことに活動のエネルギーを注いできた.継続的に学習を積み重ねるグループが生まれ,その1つが本紙でも報告してきたカナダのオンタリオ州のコンシューマーのイニシアティブについて学ぶグループである.現地視察も含めた学習を始めて1年が経過した.
 現在,トロントでの視察で経験してきたことをもう一度話し合いながら,この1年間の学習で何が見えてきたのか,気づいたことをまとめる作業に入っている.
 ここでは,これからのやどかりの里の方向性やこれから大きく動き出すであろう精神保健福祉活動の行方と重ねながら報告したい.
 この学習の最初に行ったことは,日本における精神障害者の処遇の歴史だった.いかに精神障害者が人間としてみなされてこなかったのかということを再確認した.そして,戦後精神病院が増え,精神病院が精神障害者の生活を抱え込む時代が長く続く.一方カナダでも精神病院が精神障害者の処遇の中心であった時代はあったが,1960年代に地域ケアの重要性が認識されている.そして,1974年には病院中心処遇から脱却し,地域精神保健における代替的方法(オルタナティブ)が検討され,利用者が主体性を発揮することを基盤にしたプログラムが作られていく.
 しかし,日本の精神病院の平均入院日数を見ると,この大きな転換点が日本にはいまだ訪れていない.精神障害者の処遇が根本的に変わらないのは,ここに大きな問題がある.
 精神医療の問題を社会の問題と捉え,変革を促していくこと,そのためには私たち1人1人の人権意識が問われる.  そして,この長いこと変わらない大きな問題を抱えながら,精神保健福祉の窓口が市町村に移り,新しい局面 を迎える.まさに住民自治が問われる.精神保健福祉業務の市町村移管は,国の政策決定によるものである.しかし,私たちの暮らしの基盤となる自治体,住民の声が一番身近に届く自治体が,1人1人の住民を大切にする施策を展開するなら,まさに市町村移管が,医療モデルから地域モデルへの転換の大きなきっかけとなる可能性がある.
 1988年にオンタリオ州政府が発表した「グラハムレポート」では次のように記されている.
「本当の意味での利用者主体になるには,精神障害者のニーズを本質的に理解しなくてはならないし,政策決定過程への利用者の参画を支援するには,具体的な方法が位 置づけられなくてはならない」
 精神障害者の心の底からの願いや思いを,彼らの肉声で自治体に届けることから始めたい.


<第3木曜会報告>

人づくりセミナーに向けて

 1月17日(木)の第三木曜会では,来年度の人づくりセミナー(以下セミナーと略す)について話し合った.
 まずは三石さんからこれまでの報告があった.「5年前,活動が広がり,職員もメンバーも増え,やどかりの里の組織が大きくなったことが,セミナー開催のきっかけ.職員同士のコミュニケーションが上手く取れない,特に新人職員に対し,どんなことを大切にして活動しているのか,伝えきれないという問題が生じていた.当時のチーフ職員がそのような事態に危機感を持ち,丸地先生1)の力を借りて始めたのがこのセミナーだ.以来4年間毎年,やどかりの里職員,精神保健の現場で働く人と研修を続けてきた.4回目のセミナーはメンバーにも参加を呼びかけた.メンバーと共にセミナーに取り組んだことが,私達に大きな気付きを与え,やどかりの里として重大な活動の転機となった」と,まとめた.
 次に,セミナー参加者がどんな思いを持ったかを出し合った.「やどかりの里で働き続けたいと思うようになった」「他の参加者の人たちと話して共感したことが良かった」「グループ討議を通 じて,モデル2)を使い,日常やっている自分の仕事がこんな意味があることだと分った」等の声が挙がった.
 素材3)提供をしたメンバーは,「2年前に発表したことが,現在のやどかりの里に生きていることがわかった.提案した意見が反映されていくのを感じた.」「論文が難しくて理解できなかったが,やどかりの里のものの考え方を教えられた」との意見が出た.
 初回からずっと参加している職員は,「誰かが決めて物事を進めていくのではなく,話し合いながら皆がやりたいことを決めていきたい,そういう姿勢で活動を作っていこうと認識するためのセミナーだった」と発言した.
 3回参加している職員は,「第1回目のセミナーの素材は,『宮古島からフィラリアという病気を根絶しよう』という論文だったが,当時,私はなぜそんな論文が素材になるのか分らなかった.その論文は,行政側が一方的に立てた対策では,フィラリアは減らなかったが,住民自身がフィラリアを無くそうと積極的に取り組むようになった時,初めてその病気が根絶できた,というものだった.4回目のセミナーに参加し,あの素材が意味していたのは,『住民一人一人が意志を持つことが主体性である』ということだったとわかった.主体性がどういうものなのか,なぜ必要なのか自分の言葉で言えるようになったセミナーだった.」と.
 後半は,今年のセミナーをどうしていくのかについて考える時間となった.前半で改めてセミナーを振り返ることで,日常の活動を止めて話し合うことの必要性を感じた人が多かった.今年もセミナーを開催していこうという方向性は確認された.具体的に,どのような組織で,どういう進め方でやっていくのかについては,チーフ会議をオープンにし,興味のある人が参加できるようにして検討していくこととなった.(檜山うつぎ)

1)丸地先生:元信州大学医学部教授で,やどかり研究所顧問.公衆衛生を専門とし,
  人間関係を科学する.目に見えないもの,物差しや計りで測れないものを,評価し
  ていくことを研究している.
2)モデル:丸地先生の考案する図式.物事を多角的に捉えることができているかなど
  を考えるために用いる.
3)素材:セミナーの時,話し合いのもとになる論文のこと.



<1月の動き>

1/4 新年顔合わせ会開催
1/9 与野精神保健ボランティア講座打合せに檜山出席
1/10 横浜市旭区たまり場にて増田・黒崎取材
1/10〜11 山梨県立北病院より2名1泊2日研修
1/11 新座市ホームヘルパー増田・香野(英)研修打ち合わせ
1/11 「人力車」にあゆみ舎出店
1/11 埼玉県障害者社会参加推進センター協議会精神障害者部会に山口参加
1/12 横浜市旭区たまり場にて黒崎,香野取材
1/12 大宮障害者施設連絡会研修会に浦崎出席
1/12 エコリサイクル交流集会2002「忘れていませんか.それぞれの環境問題」に
    ドリームカンパニー参加
1/15 日本精神保健福祉士協会事業委員会に渡辺出席
1/16 東松山保健所にて吉江・香野講演,
     OMIYAばりあフリー研究会夜の学習会にて増田講演
1/18 埼玉県精神障害者社会復帰施設運営協議会生活支援部会
     「県内メンバー親睦会」にメンバー11名・澁谷・福島・小林・渡辺参加
1/17 上尾市役所にて「響き合う街で」増田・黒崎取材,打ち合わせ
1/18 埼玉県社会復帰施設実地指導
1/18 埼玉県立大学短期大学部看護学科学生10名実習
1/19〜20 「自治体に働く保健婦のつどい」に三石・白石出席,
     増田・黒崎・長谷川・西村取材,鈴木(勉)出版販売
1/22 さいたま市食事サービス連絡会に金子・坂本・小泉出席
1/22 ヘルスケア関連団体ワークショップ世話人会に増田出席
1/22 東京医薬専門学校より1名1日研修,茨城キリスト教大学より1名1日研修
1/23 埼玉県精神障害者社会復帰施設運営協議会役員会に
     三石・香野(恵)・渡辺出席
1/23 埼玉県社会復帰対策検討部会,谷中出席
1/23 ジョイントサークルかたくり(静岡県)より35名1日研修
1/24 横浜市旭区よりセミナー実行委員打ち合せ・体験研修の為9名来里
1/24 第1回所報編集会議
1/25 「人力車」1周年記念パーティーにあゆみ舎・ルポーズ出席
1/25 横浜市旭区たまり場にて増田・黒崎取材 1/26 第5回定例理事会開催
1/26〜27 第8回ヴィレッジセミナーツアー参加者事前ミーティング
1/27 サロンコンサート開催「東京フラメンコギター合奏団&舞踊曽我辺靖子」
1/27 日本精神保健福祉士協会事業委員会に渡辺出席
1/28 さいたま市与野障害者団体協議会理事会に佐々木・檜山出席
1/29 メンタルサポートほほえみ(宮城県)より3名1泊2日研修
1/30 埼玉県身体・知的障害者ケアマネージメント従事者研修会にて香野(英)講演
1/30 上尾市関係者の座談会に増田・黒崎取材


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