<1面記事>
生活支援活動の転換期を迎えて
今やどかりの里の生活支援活動は,さいたま市の一資源としての活動へと転換期を迎えている.自分たちの暮らす地域を足場にして再度やどかりの里の生活支援活動を見直し,ビジョンをつくっていくことの必要性に迫られているのだ.やどかりの里では,上半期をかけて生活支援活動の見直しを行ってきた.話し合いの大きな柱は,30年間やどかりの里が培ってきた理念や価値の普遍化をはかりながら,いかに住民に必要な精神保健福祉活動をつくっていくかということ,そしてその際,民間のやどかりの里がさいたま市の一資源として果
たすべき役割は何かということである.
年度始めには,必要な人が必要な時に相談しやすい態勢にするため,生活支援センター登録料を廃止し,契約内容を見直し,利用相談窓口を各資源でも受けられるようにした.そして,半年間の見直しから5つの課題が明らかになった.1)在宅ケア,2)就労支援,3)思春期の子どもの問題の課題である.1つ目の在宅ケアの課題は,今まで行ってきた長期入院者への生活支援やサービスの開拓に加え,本人や家族の高齢化,身体的な機能低下などに伴って本人の日常の暮らしに変化が出てきた場合の地域での暮らしを支える環境づくりである.その際,ホームヘルプサービスなどの検討を視野に入れ,新しいサービスや支援の態勢をつくっていくことが課題であろう.
2つ目の就労支援の課題は,働く場での支援や情報提供と共に,地域に働く場の選択肢を増やすこと,すでにある資源やサービスの見直しと新たな地域のネットワークづくりを進めていくことである.
3つ目は思春期の子どもの問題の課題である.相談者の中には不登校やいじめを抱え安心して居られる場がない人が多い.こうした背景には今の社会や教育の問題もある.まずは現状の把握と共に,教育機関や関係機関との連携をつくり情報収集していくことが課題である.
次に,4)緊急対応の態勢,5)援護寮の態勢の見直しである.やどかりの里は生活支援センターと援護寮が連携して24時間の緊急対応の態勢をつくっている.しかし,日・月曜日の夜間は,職員が自宅で緊急連絡を受けている.現在では登録者が180名弱と規模も大きくなり見直しが必要になってきた.そして来年度から居宅生活支援事業が市の事業となれば,やどかりの里の援護寮はさいたま市で唯一の宿泊機能をもつ資源となる.今後緊急対応の態勢を見直すと共に,さいたま市の一資源としての援護寮の機能を見直し,新たな態勢をつくっていかなくてはならない.
これらは新しく始める取り組みで,現在生活支援態勢の再編も検討中である.時代の流れと共に,「やどかりの里らしさ」を失わず生活支援活動の転換を図っていく必要性に迫られている.
<第3木曜会報告>
カナダ・トロントで学んできたこと
10月18日(木)の第三木曜会では,カナダ・トロントにおける研修の報告会が行なわれた.本紙でも今月号から研修参加者の報告を掲載するので,ご覧頂きたい.
当日はスライドを使い,キーワードに基づいて参加者が発表した.現地の写
真も入り,分かりやすく工夫された報告だった.
今回の研修の目的は,「コンシューマーのイニシアティブを学ぶ」「考え方を聞く」「実践の一部を見る」「その学びをやどかりの里にどう位
置づけるか考える」である. コンシューマーのイニシアティブの歴史的背景は,10年前に一人のコンシューマーが「自分たちは同じ市民として生活でき,メンタルヘルスシステムにも貢献できる」と唱えたのが始まりである.当時不況にあったカナダでは,そこから抜け出すための資金が用意され,その一部がコンシューマーの雇用開発事業にあてられた.実際に事業が展開するなかで,コンシューマー本人が社会貢献することで自己価値を高め,また社会的にも雇用できない人はいないのだということが認識された.こうして事業は成果
を上げたのである.実際の取り組みも紹介された.コンシューマーの雇用開発の為に生まれた組織CSDI(コンシューマー・サバイバー・ディベロップメント・イニシアティブ).ここで働くマニーさんが,「自分たちにも組織を運営する力がある.病気だからといってできないことはない」と話されていたとの報告は印象に残った.
CMHA(カナディアン・メンタル・ヘルス・アソシエーション)では,雇用・高等教育・早期介入・ハウジングサービス等の事業を行っている.専門家だけではなくコンシューマー同士のサポートや,雇用側・学校側など環境整備にも力を入れ,当事者を中心とした支援を展開している.更に,そのトロント支部の取り組みも報告された.ここでは当事者が地域の中で孤立しないようにと直接的な地域介入も行なっている.驚いたのは,専門家がチームを組み,当事者を中心としたサービスが連携して提供されていることだった.お互いに考え方の違いがある中で,共通
基盤に立てるまでに大変な苦労があったとも話された.
最後には今回の研修を振り返り,そのあり方について話がされた.参加したメンバーから,「研修が職員のペースで進むとついていけない」との声が上がった.共に学び作り上げていくとき,お互いの持味を生かすことは簡単なことではない.そこをクリアするには,基盤にあるのが「人権」であり,話し合いが大切なのだ.移民の国カナダでは,人がありのままに認められて生きる考え方が根付いている.その上トロントもここ10年で変化し,コンシューマーは自分の価値に気づくことができた.そこが人権の思想とワンセットになって息づいているのだと言う.
日本においてはこれまでの歴史のなかで,精神障害者の人権が認められてこなかった.社会的に人として尊重されず,自分の意見を主張できず,その結果
,自分の内なる部分にも偏見を作り出さざるをえなかった.報告を終えての感想では「日本人は外の障壁・内なる障壁によってあきらめすぎている.カナダではあきらめずにそれを変えようとしている」との声が上がった.今回の研修は具体的な活動を見聞するだけではなく,その基本にある考え方に触れたことが大きかったと思わせる報告であった.
今後は,多くの人の共通理解を深め,共に話し合いを進めて,やどかりの里にどう位
置付けるかを考えていく.
(機関紙編集委員 高村 美鈴)
<理事会報告>
平成13年度定例理事会が10月13日(土)に開催された.出席者及び議事の内容は以下の通
りである.
出席者:谷中,増田,志村,島田(喜),香野(英),小山,峯野,三石,浅見
委任状提出:土橋,粕谷,柳
1.平成13年度上半期決算状況について
補助金が順調に出て施設運営は楽になったこと,利用者の法人会員入会が任意となったが9月30日現在昨年比75%入金があること,後援会費の納入を11月号で依頼すること,バザー売上の配分等浅見より説明された.
2.平成13年度上半期を振り返って報告
・理事会のあり方,運営方法について検討中
・状態調査から導き出された5つの課題は順次検討している.
やどかりとしてのビジョンを描いていく.
・さいたま市に1つの援護寮としての役割,在宅ケア等生活支援活動は節目を迎えている.
・メンバー同士の交流活動は札幌で1回,アメリカのメンバー受け入れは今年度は中止.
・谷中理事長がさいたま市の障害者プラン策定委員ならびに精神の部会も委員となる.
また県においては社会復帰対策検討部会の座長になった.
・人事に関して,今年度PSW職の採用試験実施の件,出版の新規募集,
非常勤職員の採用等各部署より報告があった.
次回理事会予定
12月15日(土) 午前10:30〜12:00
(浅見 典子)
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