-TOPICS-

機関紙「やどかり」11月号
(2006.11.15発行)


<1面 記事>

障害程度区分とやどかりの里

 
 2006年10月1日,障害者自立支援法が本格施行された.その前後から,この法の不備がマスコミ等でもしばしば取り上げられ,臨時国会の予算委員会などでも障害者自立支援法についての質問が出され,始まったばかりの障害者自立支援法の改正法案が民主党を中心に今国会で提出される動きもある.法案を成立させた与党も含めてこの法に大きな欠陥があることを認めざるを得ない状況である.

 こうした中で,106項目にわたる障害程度区分の認定調査項目の問題も指摘されており,各地で気になる動きが見え隠れしている.
 障害者施設の経営問題と障害程度区分の問題である.従来の授産施設などが介護給付の「生活介護」という事業を選ぶ場合に,障害程度区分によってその人を支援する際の報酬額が違うのである.(就労継続支援という事業は訓練等給付なので,障害程度区分による報酬の違いはない)

 施設によっては,いかに障害程度を重く判定させるかの研究を重ねているところもあるという.また,障害のある人の働くことを支援してきた施設が,生活介護の事業を選択するのが,そこで働いていた障害のある人の希望に合致しているのかという疑問もある.施設の経営を考えれば,そういう手段をとらざるを得ないということなのだろう.しかし,障害程度が重くなると,本人の負担も重くなるのである.この根本問題を忘れてはならない. 

 この法の審議過程で,障害程度区分認定調査は,全国統一で透明性のある仕組みと喧伝され,障害者自立支援法の目玉の1つであった.しかし,実際には高齢者の介護保険法の介護認定のための調査項目をベースにしているため,さまざまな障害があり,幅広い年齢層の人たちがいる障害のある人の障害の重さについてはかるには不備な点が多いと指摘されていた.確かに,介護給付を受ける人の場合,審査会での2次判定が行われるが,上位区分への変更率が高く,精神障害のある人の場合では国平均で52.9%,さいたま市内では65%という結果になっており,認定調査項目がその人の障害程度をはかる適切な物差しになっていないことは事実だ.

 しかし,障害程度を適切にはかる仕組みにするという改善方法でいいのだろうか.そもそも障害程度をはかるという考え方に根本的な誤りがあるのではないか.

 やどかりの里は,精神障害のある人を「病者」としてではなく,「生活者」として関わることの大切さを主張してきた.精神疾患の症状や障害による不都合に注目することへの反省があったからだ.そして,疾病や障害があってもその人がどんな生活の実現を望んでいるのか,そして,その人が自分なりの夢や期待を持てるように関わることを大切にしてきた.そのためにどのような環境を整える必要があるのか,そこをともに考えるのが関わりの基本であった.

 障害程度区分の考え方は,まさに逆行するものだ.この人は何ができないのか,そしてできないことを数値化するのが,この仕組みである.本人の希望や願いは後回しにされ,まず「障害程度区分」ありきなのだ.そして区分けされた中で,「あなたの利用できるサービス」が提示されるのである.

 精神障害のある人たちは,中途障害であり,自分の疾病や障害を受け止めるには時間が必要だ.そして,仲間との出会いやさまざまな経験を重ねる中で,回復し,人間的な成長をしていく.こうした過程を大切にしていくことと,障害程度区分の考え方はなじまない.

 障害程度区分と応益負担,そして日割りによる報酬の支払い,こうした制度が,障害者福祉の水準を大きく切り下げることになる.

 そして,施設の経営中心に考えれば,利用する人の負担が増し,施設側は経営に都合のよい人を選ぶようになる.

 こうしたときだからこそ,活動理念を互いに確認し合い,問題の本質を見つめる目を濁らせないことが大切である.


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