-TOPICS-

機関紙「やどかり」7月号
(2005.7.15発行)


<1面 記事>

実践や体験に基づく意見を発信していくこと
25年ぶりの日本精神神経学会での発表


 2005年5月18日,19日,20日,大宮ソニックシティで第101回日本精神神経学会総会が,「精神医学・医療の専門性の確立を目指して」というテーマで開催された.20のシンポジウムが企画され,やどかりの里では,そのうちの2つのシンポジウムで発言することになった.歴史を重ねた大きな学会なので,この他にも,5つのワークショップ,14の教育講演,7つの特別講座等々,多岐にわたるプログラムが企画されていた.

 やどかりの里からは,「精神障害に対する偏見克服をどう進めるかー地域生活と自立支援に向けて」のシンポジウムの指定発言者として,辰村泰治さんが当事者として発表した.国の啓発普及の取り組みの報告や統合失調症への呼称変更によって病名告知に実態が変わったか,精神障害に対する偏見の削減,偏見克服と地域生活自立支援といった内容で,4人のシンポジストが意見を述べ,それに続いて辰村さんが発表した.辰村さんは,仲間との数回にわたる学習会での議論をベースに,自分にとっての偏見差別は地域ではなく,精神病院のなかでもっとも激しいものだったと述べた.精神病院での処遇により,自らの内なる偏見も作られていったのだと報告し,その発言は大変大きなインパクトがあった.

「精神障害者の就労支援」のシンポジウムのシンポジストとして増田一世(やどかり情報館館長)が実践を踏まえての報告を行った.やどかり情報館での経験に基づき,精神障害のある人の就労の障壁について述べ,その障壁を低くしていくための課題について述べた.この他,全国の職親会の一般就業への取り組み,障害者職業センターの精神障害者の就労支援の報告,長野の栗田病院問題等で行われた,作業療法の名を借りた不当な労働の問題等を通して,障害者就労施策の労働と作業を整理することの必要性などが報告された.就労について,学会で取り上げるのは今回が初めてだという.この2つのテーマが今後どのように検討され,深められていくのか見守っていきたい.

 やどかりの里が,日本精神神経学会で発表の機会を得るのは,25年ぶりだ.25年前の1979年に谷中輝雄会長が「社会復帰施設の現場から やどかりの里の経験」として発表している.

 辰村さんは,「あれだけ大勢の医師の前で話をするのは初めてのことで,緊張した」と述べている.医師が中心の学会で,精神障害のある人や福祉現場の報告が活発に行われることによって,真に「患者中心の医療」が実現することの一助になればと思う.さまざまな機会を捉えて,自分たちの実践に基づく考えを発表していくこと,さまざまな立場,意見の人たちとも議論を重ねていくこと,35年の歴史の中でも変わらぬ取り組みの1つである.
と述べ,閉会の挨拶とした.

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