「障害者自立支援法案」の主要な論点と修正協議項目

ネクスト厚生労働大臣
横路孝弘

【1】 主要な論点
1.法案の前提として
 この法案が障害者の「自立および社会参加」を基本に置いたものであることを明らかにするととも
に、障害者福祉施策を谷間のないものとするための同法案の対象者の拡大、および抜本的な障害定義
の見直しを行うことが必要である。
 また併せて、障害者の権利擁護に係る制度の確立が早急に図られるべきである。
【ポイント】
・法案の目的に「自立および社会参加」を明記すること
・対象拡大および障害定義の見直しを行うこと
・権利擁護に係る制度の確立を行うこと

2.利用者負担の見直しについて;
 新たな障害福祉サービス、自立支援医療に係る利用者負担について考えるとき、その大前提として、
障害者の所得保障の確立が必須条件となる。また、利用者に負担を求めるにあたっては、障害当事者
の収入のみに着目し、その上で所得に応じた上限額の設定、減免措置を講ずるものとすること。
【ポイント】
・障害者の所得保障制度の確立を行うこと。
・想定されている政省令事項に係る上限設定・経過措置等の金額・対象者等の確認。
・低所得者対策については、介護保険制度導入時の対策も参考にしつつ、当面の間の経過措置として
の定率の軽減や社会福祉法人等による減免等の措置を講じる。
・特別障害者手当等の既存の制度の拡充による当面の手立てを講じる。
・所得把握についての行政の執行権限はどの程度のものとなるのか。

3.国および自治体における費用負担、財源のあり方について

 国および都道府県の障害福祉サービス費に係る費用負担については、障害程度区分の基準サービス
に該当しない非定型・長時間サービスの利用者の場合についても、義務的経費の負担対象とし、市町
村における柔軟な運用が対応可能な仕組みとすること。
 また、裁量的経費となる地域生活支援事業についても必要経費の確保に向けた方策を明らかにすべ
きである。
【ポイント】
・国、都道府県の障害福祉サービス費等負担対象額の算定方法を明らかにすべき。
(第94条1項;政令)

4.障害程度区分と審査会について

 障害福祉サービス支給決定に係るプロセスにおいては、障害者一人ひとりのニーズに対応するもの
となるよう、本人の意向に沿ったサービス決定が行われる仕組みとすること。
【ポイント】
・審査会等での障害者等の意見徴収の保障を明記する。(21条2項、22条3項)
・不服審査会における当事者の意見聴取の保障については、行政不服審査法「審理の方式」(第25条
1項)が適用される旨の確認を行う。(第104条;政令)

5.移動支援サービスについて

 個別給付となる「重度訪問介護」「行動援護」の対象者の拡大を行うとともに、地域生活支援事業
における「移動支援」が、従前どおり、障害者・児の社会参加と自立生活を維持するため、これまで
の水準から低下しないための財源確保の方策を提示すること。
【ポイント】
・行動援護、重度訪問介護の対象者を広げる。

6.居住支援サービスについて

 障害程度別にグループホーム・ケアホームへの入居の振り分けは行わないこと。また、重度障害者
の入居可能なサービス水準を確保すること。
【ポイント】
・人員基準(43条1項;省令)、設備運営基準(43条2項;省令)の方向性は?

7.自立支援医療について

 公費負担医療を自立支援医療とする本年10月からの実施は見送り、改めて医療を必要とするものの
範囲、自己負担のあり方や現状の運用の課題等について検討したのち、制度改正の必要性について議
論すべきである。
【ポイント】
・精神疾患に係る重度かつ継続の範囲については、特定した疾患のみに限るのでなく、病態像とする
べき。(第54条1項;政令)

8.障害者福祉計画とサービス提供体制の基盤整備について

 障害者福祉計画の策定にあたっては、サービス利用について潜在的なニーズを把握し、それを数値
目標として取入れるべき。(基本指針)
【ポイント】
・基盤整備について予算措置を伴う時限立法等の措置を講ずること。

9.その他

 本法案施行後の実施状況、経過等について、毎年国会に報告書を提出すること。

 

【2】 修正協議を求める事項

 前記の多くの論点を踏まえれば、本法案に対して民主党は反対である。
 しかし、本法案が障害者等の生活を直接に左右するものであることから、障害者・児、家族及び関
係団体からは一歩でも法案の改善を求める悲痛な叫び声が国会に届けられている。この当事者の声に
真摯に応えていくことは政治の重大な責任である。
 民主党としては、障害者が差別を感じることなく、自己選択・自己決定に基づき社会の構成員として
その能力を存分に発揮できる社会を構築していくことを目指すものであるが、その一環として、今回、
法案にとどまらず、障害者等の生活を実質的に左右する政省令事項等についても、与党と政治レベル
の協議を行うこととしたい。
 具体的には以下の事項について、法案の修正、実質的な障害者福祉サービスの水準確保・向上等を求
め、これを実現することにより障害者等の生活維持、自立と社会参加を実現しいくこととする。

1.法の目的

 法案の目的に、障害者基本法の目的に明記されている「自立及び社会参加」を加える。

2.定率負担の凍結・所得保障

 新たな障害福祉サービス等に係わる利用者負担について考える時、その大前提として、障害者の所
得保障の確立等が必須条件となる。そこで利用者に負担を求めるにあたっては障害当事者のみの収入
に着目することとした上で、障害者の所得保障制度の確立及び低所得者の負担軽減策の具体的な拡充
が実現するまでの間、定率負担の導入を凍結する。

3.移動の保障

 地域生活支援事業における「移動支援事業」は据え置きつつ、個別給付の「重度訪問介護」「行動
援護」の対象を拡大し、サービス受給者の範囲を実質的に現状水準に維持することにより障害者の社
会参加を保障する。

4.「自立支援医療」の凍結

 公費負担医療を自立支援医療とする本年10月からの実施は凍結し、改めて医療を必要とする者の
範囲、自己負担の在り方を検討する。

5.重度障害者の長時間介護サービスの保障

 国及び都道府県の障害福祉サービス費に係わる費用負担については、障害程度区分の基準サービス
に該当しない非定型・長時間サービス利用者の場合でも義務的経費の負担対象とする。

6.居住支援サービスの水準確保

 障害程度別にグループホーム・ケアホームへの入居の振り分けは行わないこと。またグループホー
ムにおけるホームヘルパーの利用を可能とするなど、重度障害者の入居可能なサービス水準を確保す
ること。

7.本人の意見聴取

 「障害程度区分の認定」「支給要否決定等」を行うにあたり、障害者等又は保護者の求めがある場
合には、その意見を聴取することを義務づける。

8.対象拡大及び障害定義の見直し

 発達障害・難病等の者に対する本法の適用について、障害者等の福祉に関する他の法律に定める障
害者の範囲の見直しと併せて速やかに検討し、必要な措置を講ずる。

9.権利擁護に係わる制度の確立

 障害者の虐待防止に係わる制度、障害を理由とする差別禁止に係わる制度、成年後見制度その他障
害者の権利擁護のために制度について、速やかに検討し、必要な措置を講ずる。
以上


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