やどかり情報館(精神障害者福祉工場)


やどかり情報館とは
 やどかり情報館は,精神障害を持ちつつも,労働者として安心して働きたいという思いから,埼玉 県大宮市(現さいたま市)染谷に1997年4月に開設いたしました.福祉工場の特徴は,障害者として利用する施設ではなく,最低賃金を保障し,労働者として雇用されるところにあります.
 やどかり情報館は,やどかり出版やどかり印刷やどかり研究所の3つ事業からなりたっています.障害者ならではの情報の発信基地を目指した活動を行っています.私たちは,精神障害者が病気や障害を抱えつつ,前向きに生きていくことの中に大切な価値があると考えています.書籍や,体験発表会などイベントを通 じて情報の発信を行うなど,病気や障害の体験を活かした仕事づくりをしています.
 また,障害を持った従業員は,健康を守りつつ働くために,週に最長で35時間(実質30時間)労働です.雇用契約に関しても,常に働きやすい環境を作るために短期間で見直しをして,働く日数や時間をそれぞれの状況に合わせて調整しています.
 そして従業員と職員の関係は,ともに仕事のプロフェッショナルをめざすパートナー(同僚)です.1人1人が生き生きと働くためには情報を共有し,ともにやどかり情報館の運営について考えていくことが必要です.そのため,毎週1回の全体会議で,お互いの仕事の流れを共有し,情報館全体の運営について検討しています.
 また,染谷という地域の一員として,市民の方々ととも響き合いながら生きていくことを目指しています.やどかり情報館2階には80人で利用できるホールがあり,地域の皆様にご利用いただいております.

やどかり情報館の開設にあたって 
 やどかりの里は,1970年に活動を開始しましたが,始めの20年間は公的な補助金がなく,自主運営を続けており,存続することに大きなエネルギーを割いていました.精神保健法に社会復帰施設が位 置づけられたことを機に,1990年に援護寮と通所授産施設を開設し,その後作業所,グループホーム,生活支援センターを街の中に開拓してきました.そうした生活を支える資源が充実し,それぞれが街の中で自分らしく生きるための基盤ができたころ,生活保護を返上し,障害年金と自分で働いた賃金で生活したいという希望が出されるようになってきました.そこで検討されたのが福祉工場でした.


やどかり情報館の概要
 やどかり出版とやどかり印刷,そしてやどかり研究所の3つの事業により成り立っています.定員は30名ですが,現在18名の従業員が働いています.仕事の内容は,出版では,企画,編集,制作,本の発送、販売管理,文化事業部ではイベントの企画や体験発表会、講師派遣なども行っています.印刷ではコンピューター入力,印刷,製本等の仕事があります.また.研究所では,会員の管理,ニューズレターの発行など,事務局の仕事があります.毎週1回の全体会議で,情報館全体の運営についてと,お互いの仕事の流れについて、情報を共有する努力をしています.


やどかり情報館が大切にしていること
1. 精神障害者の病気の体験や障害の体験には大きな価値があると考えています.その体験を生かした仕事づくりをすることです.
2. それぞれが健康を守りつつ働く職場であること.週に最長で35時間労働(実質は30時間),短期間で雇用契約の見直しをすることになっています.働く日数,時間については,それぞれの状況に合わせて選ぶことができます.
3. 従業員と職員の関係性は援助関係ではなく、お互いがともに働くパートナーであること.そのためには情報を共有し,ともにやどかり情報館の運営について考えていきます.

職員配置
 施設長     1
 精神保健福祉士 1
 指導員     4
 看護士     1
 医師(顧問医) 1
 事務員     1
 出版顧問    1


開所時間 9:00-18:00(日,月,祝祭日は休館)

定  員
 30名

苦情窓口
 
 苦情解決責任者  増田 一世(やどかり情報館館長) 
 苦情受付担当者  宗野 政美(やどかり情報館副館長) 
 第三者委員    新井 俊夫(片柳公民館館長)

  
その他の活動
 ・情報の共有を図るため,毎週火曜日全体会議を行っています.
 ・毎週火,金曜日,全員で館内の掃除をしています.
 ・年に1回社員旅行に行きます.
 ・やどかりの里で行われる様々な行事,会合に参加します.
 ・年に2回地域の清掃活動に参加しています.


ご案内地図

<JR大宮駅(埼京線,宇都宮線,京浜東北線,東武野田線他)から>
東口より
国際興業バス7番(系統:大01)「大谷県営住宅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
 時刻表

<JR北浦和駅(京浜東北線)から>
東口より
東武バス(系統:岩02)「宮下行き」「岩槻駅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
 時刻表


<向大谷バス停から>



国際興業バス,東武バス いずれも「向大谷」バス亭で下車します.


バス停で降りたら,来た道を少し戻ります
「思い出の里市営霊園」「大宮聖苑」の案内標識が見えますので左折します.


道なりに進むと「
思い出の里市営霊園」の入口が左側に見えてきます.さらに道なりに進みます.


左側に「大宮聖苑」の案内標識が出てきますが,まっすぐ進みます.


氷川神社の鳥居を過ぎると周りに畑が見え,民家もまばらに見えてきます.


ビニールハウスを過ぎると「やどかり情報館」につきます.


<JR大宮駅(埼京線,宇都宮線,京浜東北線,東武野田線他)から>
東口より
国際興業バス7番(系統:大01)「大谷県営住宅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
 時刻表

<JR北浦和駅(京浜東北線)から>
東口より
東武バス(系統:岩02)「宮下行き」「岩槻駅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
 時刻表

<さいたま市東部,岩槻,春日部方面の方々へ>
さいたま市のコミュニティバスのバス停が「やどかり情報館」の前に設置されました.
バス亭の名前は,「やどかりの里」です.
運行は当面1時間に1便で,東武野田線の大和田駅から利用できます.
どうぞご利用下さい. 料金は,190円です.
 時刻表およびルート


雇用までの流れ

情報館見取り図

平成21(2009)年度 事業計画

平成20(2008)年度 事業報告









<平成21年(2009年)度事業計画>

1)やどかり情報館

 従来の3事業(出版・印刷・研究)に加え,軌道に乗ってきた協働ネットワーク事業,新規事業にピアサポート事業,やどかり情報館を実習の場として提供する就業支援事業を加え,事業を進めていきます.
  やどかり情報館で働きたいという希望を持つ人は多く,事業の拡大に努めながら,障害者雇用を進めます.また,精神疾患や障害を抱えつつ働くことに留意し,職務の向上のために労働支援プロジェクトの支援や体調管理のために生活支援センターの協力を得ながら,安定的に働くことを目指します.
  自立支援法に基づく事業移行などを視野に入れつつ,事業の拡大を意識し,法人全体,地域の関係機関との連携を図りながら,事業を推進していきます.また,地方自治法の改正に伴い,行政からの役務の提供なども随意契約で進められることになっており,行政等関係機関からの仕事の受注の拡大を図っていきます.
  きょうされん第32回全国大会 in さいたまの準備にあたり,ポスターや参加案内等の印刷・全国への発送作業などをはじめ,大会の成功に向けて協力していきます.

(1)やどかり出版
  単行本・雑誌「響き合う街で」の発行を中心にしながら,購読者層の拡大をはかっていきます.テープ起こし・編集・組版などの技術の向上をはかりつつ,外部からの仕事の受注も積極的に進めます.
  また,ピアサポート事業の充実に向けて今年度も委託訓練事業として精神障害のある人を対象にした訪問介護員(ホームヘルパー)2級の養成研修を行います.

(2)やどかり印刷
  個々の専門スキルの向上をはかり,高生産性の職場として事業を拡大していきます.昨年比10%のコストダウンと10%の売上アップを目標とします.増益と生産量の増加のために職員中心の作業態勢を見直し,メンバーの雇用機会の拡大につなげます.従業員の雇用については,絶対的な仕事量の確保と個々の能力に見合った実習期間に職員の対応が必要なため,半期単位での計画とします.当面,常用雇用1〜2名,短時間雇用4〜5名の枠内で計画します.

(3)やどかり研究所
  毎月開催する運営委員会を中心に事業を進めます.年に数回のやどかり研究所サロン,2月にはやどかり研究所報告・交流集会を開催します.家族支援の研究班の活動も2年目となり,さいたま市のフィールドにした調査研究を計画しています.

(4)協働ネットワーク事業
  「協働ネットさいたま」の加盟施設として,障害のある人の仕事おこしと協働労働をテーマに活動を進めます.
① 思い出の里植栽管理業務請負(継続) 
② 青山苑ゴミ収集業務請負(継続) 
③ ポップコーン製造販売の試行 
④ ブックリサイクル事業の研究
  県社協と連携し,ITを活用した中古本販売の事業化に向けて調査・研究を行います.
⑤ 地域ネットワークの拡充
  地域交流イベントへの参加,映画上映会の推進運動,近隣施設との交流会の開催

(5)ピアサポート事業
  2級ヘルパーの資格を取得した人たちがホームヘルプともで実習を行っており,実習を経て雇用契約に進めていきます.また,やどかりの里の地域活動支援センターの事業である単身者への夕食宅配事業の委託を受け,実施していきます.

(6)就業支援事業
  雇用契約を前提とせず,働くことの経験を通して,その後の職業選択を行うための実習先として,社会適応訓練事業所として登録を行い,実習生の受け入れを行います.

(7)やどかり塾事務局
  法人の独自の事業である人材養成事業としてのやどかり塾は,専任の講師や事務局態勢を整えることが困難であるため,やどかり情報館に事務局を置き,必要に応じて事業を実施します.



<平成20年(2008年)度事業報告>

やどかり情報館
(精神障害者福祉工場)

1.障害のある人を雇用する態勢について

 今年度は4名と新たに雇用契約を結び,3名が雇用契約に向けて実習を始めている.体調不良や一般企業への就職のために退職した人が5名である.一般企業などでの就職の経験がなく,作業所などで働く経験を重ねながら,やどかり情報館で働きたいと希望してきた人,契約社員などで短期間の仕事を重ねながら,腰を落ち着けて働きたいと希望してきた人,やどかり情報館で働くことを足掛かりにし企業就労に挑戦したい人など,経験や動機もそれぞれである.
  開設時より出版事業,印刷事業が主力の事業であることには変わりがないが,仕事内容を幅広く準備することによって,やどかり情報館で働く人たちをより多く受け止めていかれると考えてきた.そのため,昨年度から協働ネットさいたまの事業で霊園の植栽管理などの仕事を始めた.今年度後半にはピアサポート事業部(仮称)を立ち上げ,やどかりの里が行う生活支援活動の一部をやどかり情報館の従業員が担っていくことになった.
  また,定期的に各従業員と仕事の振り返りを行いながら,自分なりの仕事づくりをどのように考えていくのか,話し合ってきた.技術を習得し,スキルアップしていくこと,仕事の幅を広げていくこと,自分の専門分野を定め,プロを目指して研鑽を始めるなど,目標を明確にしながら雇用契約を結んできた.
  必要に応じて法人内で行っている労働支援プロジェクトの協力を求め,働きやすい工夫や環境整備を行ってきた.
  これまでは雇用を前提とした実習だけを行ってきたが,労働支援プロジェクトの利用者のニーズなどを反映し,職場適応訓練事業所としての申請を行い,働くことの経験を積み,将来の就職に具体的なイメージを描くために,実習生の受け入れを行うこととした.

2.事業の拡充・発展の課題
 
  出版事業の全般的な冷え込み傾向の中で,出版と印刷を併せ持つことの強みをどのように生かして,事業展開を進めていくのか問われた1年であった.長年,課題として掲げつつも抜本的な解決に至っていない営業活動の充実が,今年度も課題であった.
  また,新たな仕事おこしを目指して2級ヘルパーの講座を開催し,精神障害のある人10名と一般の人2名が受講し,全員が資格を取得し,1名が他の事業所で働き始め,2名が法人内に開設したヘルパー事業所ともで実習を始めた.2月からは,やどかりの里の単身生活者を中心に夕食の宅配サービスをやどかり情報館のメンバーが行うことになり,ヘルパーの仕事と夕食宅配の仕事を合わせてピアサポート事業部(仮称)の仕事として位置づけ,新たにスタートさせた.  (増田 一世)

3.フットサルとやどかり情報館

 従業員と職員がいっしょになって,フットサルの大会に参加し,スポーツを楽しんだ.他者との協同や仲間との交流の経験は,職場内で円滑なコミュニケーションを生んでいる. 
  また,身体を動かすことの爽快感,達成感,満足感は,精神的充足も満たし,その結果,欠勤が減ったり,自信の回復や,働く意欲の向上など,仕事にとても大きな影響を与えている.             (宗野 政美)

4.事業移行について

 事業移行については,2012年3月までに行うと法人全体で考えているため,今年度は事業移行についての具体的な検討は行わなかった.しかし,自立支援法を改善する,あるいは廃止に向けての運動には積極的に取り組んだ.
  移行の方向性としては,現在の労働支援プロジェクトの活動を就労移行支援事業に移行させ,現在のやどかり情報館の事業を就労継続A型とし,2つの機能を合わせた事業体系としていく方向性が見えてきている.
(増田 一世)
 
1)やどかり出版

 今年度は懸案であった家族向けの単行本「家族へのメッセージ」を新たにスタートさせ,1冊目を出版することができた.全国精神保健福祉連合会「みんなねっと」の全国大会に合わせて準備し,全国大会での反響はまずまずであった.また,同時に出版した伊勢田堯氏の業績集「生活臨床と家族史研究」も好評であった.
  神戸市で活動する「社会福祉法人かがやき神戸」の10周年を記念した「夢追い人たち」はまさに現場の実践を世に問うものであり,やどかり出版としての大切な役割を果たしたものであった. 
  そうした新たな動きの一方で,昨年度に比べ単行本の出版点数が少なく,それが売り上げにも反映し,出版物の販売は低調であった.
  雑誌「響き合う街で」は昨年度からリニューアルの準備を始めていたが,今年度2月発行49号から,4人の編集委員による責任編集態勢による特集企画が始まった.トップバッターは宗澤忠雄氏で,担当編集者にとってもこれまでにない経験を得,編集者としての力量を形成する機会になっている.
  版下作成については,DTPのシステムを整え,職員が専門技術を習得し,従業員の中からも技術習得を希望する人が出てきており,新たな事業の柱とするための準備が始まっている.
  その他,テープおこしの技術が向上し,内部の仕事だけでなく,外注の仕事も引き受けられるようにもなってきており,テープおこしから編集,版下作成,印刷,製本という一貫した流れを強みにして,仕事の拡大に努めていく土台が出来上がってきている.
  やどかり出版の編集技術の向上に力を尽くしている西村恭彦顧問が12月から病気療養に入り,西村顧問の不在をそれぞれがカバーしつつ仕事を行った.
  それぞれが自分の専門技術の向上に向けて,経験を重ねながら努力した1年であった.
(増田 一世)

(1)編集部
単行本
  単行本3冊,編集・制作を委託されたもの4冊で,単行本については例年の半分の出版点数であり,その3冊も下半期に集中している.通年を通して常時出版できることが今後の課題である.
  今年度,昨年からできた家族支援の研究班に参加されている伊勢田堯先生の本が出せたことは,研究班を通しつながりが広がったことを感じさせられた.
やどかりブックレット
  ブックレットは今年度1冊発行した.今までのブックレットは障害者からのメッセージということであったが,家族に向けた「家族へのメッセージ」ということで新たにブックレットに加わった.
  今年度,初めて試みとして当事者から自分の道のりについて原稿を募集した.
(渡邉 昌浩)
単行本一覧
・回復への一歩それは家族からの愛 2008年10月
・生活臨床と家族史研究 2008年10月
・夢追い人たち 2009年1月
編集受託
・いつも一緒に Together 2008年5月
・人間の詩 2008年9月
・心理劇 第13巻 2008年12月
・第40回全国保健師活動研究集会報告集
2009年1月
増刷
・精神障害者にとって働くとは2008年4月
・精神保健福祉士(PSW)の魅力と可能性 2008年7月
・みんな一緒に生きている 2008年9月
・もうひとつの価値 2009年3月
雑誌「響き合う街で」
  数年かけて検討してきた,誌面のリニューアルを実行に移した年となった.文字を大きくし,読みやすい誌面づくりを模索するとともに,新しい4人の編集委員による,責任編集態勢が始まった.医療・伊勢田堯氏,福祉(現場)・斉藤なを子氏,公衆衛生・松田正己氏,福祉(研究)宗澤忠雄先生といったそれぞれの分野で活躍されている方々のお力添えを得て,より本質を見据え発信していく雑誌づくりを目指していきたい.
45号 問題提起・精神障害のある人の地域ケアを考える
46号 全面特集・2007年度やどかり研究所報告交流集会
47号 新・編集委員による座談会「森の再生,地域の再生 根幹から見つめなおす時がきた!」
48号 特集・障害者虐待を考える 高齢者虐待防止対策に学ぶ      (工藤 菜乃)

(2)版下製作部
  長年版下製作を担ってきた非常勤職員の退職に伴い,前年度に導入した版下作成ソフトでの作成へと環境が移行した.
  そのため,担当職員自身の技術の向上が急務であり,従業員の技術習得までは十分に取り組めなかった.しかし,版下作成の新しいシステムの導入については,従業員の仕事おこしが目的の1つとして大きい.実際にこの作業を希望する従業員も増えてきつつある.
  また,従業員の雇用を増やすためには,作業量を増やすことが必須であるが,それには営業面が課題である.そういった面からも,まずは従業員の技術習得を進めつつ,業務の拡大を図っていきたい.  (長谷川 健一)

(3)文化事業部
① 販売促進
  全国チェーンの書店を中心に,ダイレクトメールを出し新規取引が始まっている. またFAX通信,メーリングなど整備し告知できる機会を増やしていった.しかし売上に充分に反映されていない.今後は,これまでの取り引きを維持しながら,新たな販売戦略を検討していくことが課題である.
② 体験発表会
  「人権回復へのひとつの道-退院支援に携わって」と題し,28回目の体験発表会を開催した.まず,さいたま市の退院支援事業の取り組みについて職員の三石麻友美が説明し,続いて講師の須藤守夫,辰村泰治,堀澄清の3名がそれぞれの体験,さいたま市の自立支援員に携わって感じた思いや考えたことなどを語った.このような取り組みは関心が高く,県外からの参加もあった.
  今後は,当事者だけでなく,家族の体験発表も企画していきたい.
③ 講師派遣・講師登録者学習会
  月1回派遣会議を開催し,各地からの依頼に応じた派遣者の決定,講演会の報告,意見交換を行っている.今年度は退院支援事業の実際,ピア活動をテーマとした派遣依頼が多く,メンバーは自立支援員の活動の実際や思いを話す機会が増えた.今年度,新たに講師としてメンバー1名が登録した.講演活動は各地の取り組みの情報交換,関係者の思いを直接感じとる機会になっている.外部派遣は,県外25 件,県内17件,内部派遣22件だった.
  今年度も講師団の相互学習・研鑽の機会として月1回学習会を開催した.会の内容は事前に運営員会で話し合っている.学習会には,病院職員,学生なども参加している.
④ 研修事業
  体験研修,福祉や看護を学ぶ学生への研修や実習,精神保健福祉士の資格実習等の受け入れを行った.各部署の協力を得,メンバー,職員が実習生への対応を行った.学生からは講師の体験談から障害の理解を深める機会になったとの感想が多く寄せられる.また,各地の取り組みや各地の人たちとの出会いから相互学習の意味を感じている.県内からの研修者は27件373名.県外からの研修者は23件50名だった.
  また,訪問介護員2級養成講座を開講し,精神障害のある人11名,一般の人2名が取得した.受講に際しては費用や時間割を工夫し,各人の支援者にも協力を得た.現在一般の人1名が高齢者デイサービスで,障害のある人1名が就職,2名が介護事業所で実習を行っている.       (佐々木 千夏)

 

2)やどかり印刷

(1)受注・売上状況
  年間を通しての受注量は,昨年を上回り,売上総額,利益は前年比アップを達成した.
  市内外の障害関係団体から,集会やイベントで使用する印刷物の引き合いが今年度大幅に増えたことが特徴としてあげられる.
  また,これまでの課題であった最新のデジタル技術に適合する印刷関連機器の環境整備は,ソフト面の整備を昨年度から本格化させ,今年度は,総合整備の核となるCTP(パソコン上のデジタルデータから直接刷版を出力する印刷工程ならびに機器)の導入を図った.10月には,デジタル環境に完全移行し,運用を始めている.CTPシステムの導入に伴い,文字の鮮明度や写真や図版の階調度などが増し,印刷表現の幅を大きく広げることとなった.

(2)態勢
① 印刷部門
  職員1名,従業員2名(非常勤)が作業を行い,実習生2名が職場実習を行った.うち従業員1名が退院後,復職に至らず1月に退職.実習生1名も体調不良により欠席が続き,2月に実習を終了した.他の実習生1名は,1月に従業員として雇用契約を結んだ.
  今年度前半は,従業員の体調不良や入院療養が続き,職員1名で作業を進めざるを得ない状況が続いた.後半は,従業員が総入れ替わりとなり,技術指導する時間を作りながら作業に追われることとなった.
  一方,両面印刷機の電子操作パネルの異常で,一定時間,電源が入らないという不具合が昨年来頻発し,今年も対応に苦慮することとなった.現行の機械は初期整備から13年が経過し,根幹をなす部分で不具合が出始めている.高い品質と経費の削減を目標に効率的な作業をしていくためにも,新しい機械の整備を進めていくことが直近の課題となっている.
② 製本部門
  作業量が増えたが,専従の担当者が置けず,作業工程に応じて,印刷部門の職員と従業員が分担し作業を進めた.
  製本オペレーターの専従化と人員の拡充が課題であり,従業員の求人はトライアル雇用制度を使って行ってきたが,態勢の整備を図ることはできなかった
③入力・DTP・CTP部門
  職員1名,従業員3名(非常勤)が作業を行った.入力作業は主に,やどかり出版よりテープ起しの作業を受注し,作業を行った.
  デザイン・レイアウト作業としては,単行本の表紙やチラシ,ポスター,名刺,はがき等の版下づくりを行った.また,パソコンの作業環境をWindowsに統一させ,これまで作成してきたMac環境のデータを移行していく作業を進めている.
  なお, CTP導入に伴い,これまで,文字やイラスト,図形などを,一枚の台紙にレイアウト通りに貼り付けたり,描いたりしてきた版下作業は,パソコンで,完全なデジタルデータを作成する作業へと変わるため,即応していく技術的な課題解決が直近の課題となっている.
④ ITソリューション部門
  入力・DTP・CTP部門の職員1名,従業員1名(非常勤)が兼務で作業を行い,やどかりの里のWebサイトの運用とネット環境の保守管理業務を行った.サイトの運用では,国の精神保健福祉に関する最新の情報をいち早くWebに掲載,積極的な情報発信を行った.
  その他,日本健康福祉政策学会より,第12回学術大会の新規コンテンツの開発作業を請け負った.また,やどかり出版のWebサイトのリニューアル作業を行った.
⑤ 営業部門
  新規取引先が増えたことに伴って,生産管理や請求事務など,管理運営に関わる業務を分業化させ効率を図ることが必要となっている.また,専従の担当者を置いていないため,年間を通して充分な営業活動ができなかった.アフターフォローをはじめ,印刷に関わる企画や提案,プロデュースなど新たな付加価値を提供していく営業力の強化と人員の確保が課題となっている.   (宗野 政美)

3)やどかり研究所

 障害のある人,研究者,実践者が協力して研究所の運営を検討する運営委員会(原則月1回)を中心に事業を進めた.社会情勢の変化も大きく,運営委員会で情勢についての共有を意識的に進めてきた.
  また,今年度はさまざまな大学の学生や大学院生からの研究協力についての依頼が多く,やどかり研究所事務局がその窓口となり,研究者には運営委員会に参加を要請し,運営委員会では毎回のように協力依頼についての話し合いが行われた.メンバー,職員への聞き取り調査の依頼が多く,研究目的や趣旨などを運営委員会で理解しながら,各現場への依頼となった.
  調査研究の協力は県内の6団体(きょうされん埼玉支部,埼玉県発達障害福祉協会,埼玉県社会就労センター協議会,埼玉県身体障害者療護施設協議会,埼玉県精神障害者社会復帰施設運営協議会,埼玉県知的障害者入所施設家族会連合会)が行う第4回障害者自立支援法に関する影響調査の事務局を務め,その集計等に協力した.
  研究班活動は家族支援研究会の活動だけであったが,三菱財団の研究助成を受けたことも大きな弾みとなり,英国視察が実現し,この取り組みの経過の中で,外部から研究班に加わるメンバーが増え,家族支援研究に対する期待の大きさがうかがえた.また,さいたま市精神保健福祉ネットワーク会議においても家族支援についての研究報告の機会を得,視察も含めてこれまでの取り組み経過を多くの人たちと共有することができた.
(増田 一世)
 
(1)各研究班の活動
① 家族支援研究班
  昨年度よりやどかり研究所の研究班として家族支援研究班が立ち上がり,今年は2年目を迎えた.当初から,伊勢田堯先生(前・東京都多摩精神保健センター所長,現・代々木病院)より,先生自身の英国視察報告等を受け,われわれが学ぶべきこと,日本にも導入できることがあるのではないかと考え,英国の障害者福祉施策の歴史や家族支援の歴史,現在の精神保健施策の背景などについて,事前学習を行い,視察に向け準備を行ってきた.そしていよいよ2008(平成20)年11月9日から13日まで,英国視察へやどかりの里からは増田,玉手,工藤の3名が赴いた.
  今回の視察では,Rethinkという家族や精神障害のある人たちの支援を行う団体の組織活動や実際の支援活動について話を伺うことができた.
  Rethinkは,家族と当事者を中心に理事会が構成されており,英国全土の8つの地域に140グループ(100は家族のグループ)があり,同時に各地で地域支援サービスを提供している.他に,電話やメールによる全国的な相談サービス,キャンペーン活動,調査・研究活動などの活動を展開している.また,調査・研究チームでは,自分たちの行っているサービスの効果を検証するため,サービス利用者に対して聞き取り調査を行ったり,調査をふまえて国に対する政策提言を行っている.同じように,相談サービスで受けた相談内容についても,1件ずつ記録化され,政策提言に反映されているということだ.他にも2つのハウジングサポートの見学を行い,実際に利用している当事者に話を伺うことができた.
  また英国保健省では,英国の精神保健施策10か年計画とも言うべき「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク(以下,精神保健NSF)」について,英国保健担当局長ルイス・アプルビー教授より直接報告を聞く機会を得た.
  1週間弱という短い期間であったが,Rethinkの活動の実際を見ることもでき,貴重なお話を聞く機会にも恵まれて充実した視察ができた.
  今後は,この英国視察での成果を,歴史や社会,社会保障の土台が違った国であることを念頭に置きながら,どう日本で活かしていくのか,慎重に検討を重ねる必要がある.隔月に開かれている研究班の会合を中心に英国視察の成果をまとめ,さまざまな発表の機会などで報告していきたい.また併行して「家族へのインタビュー調査」を進めている.これは精神障害のある人を持つ家族が,いかなる介護体験をし,求めている支援を明らかにすることで,新たな支援の仕組みを作り出していくための取り組みである.まずはさいたま市の実態把握を進める予定である.
(工藤 菜乃)

(2)やどかりサロン
  やどかり研究所では,年に数回,地域で活動されているさまざまな立場や職種の方々をお迎えして,研究所サロンを開催している.
  研究所運営委員会でゲストについて検討し,今年度は,下記の2名をお迎えした.
① 11月1日(土) 婦人保護施設いずみ寮施設長の横田千代子氏 「難を逃れて懸命に生きる人たちを支える~想像を絶する虐待,DV,売春の実態~」
② 1月24(土) リハビリテーション天草病院・ソーシャルワーカーの野田妙子氏 「協働のしくみを解き明かせば…~知識・意識・仲間があれば現状は変えられる~」
(渡邉 昌浩)

(3)やどかり研究所報告・交流集会
  2009(平成21)年2月21日(土)~22日(日)の2日間,やどかり情報館において,第7回やどかり研究所報告・交流集会が開かれた.この集会は,1年に1回会員の研究・実践報告,そして交流を目的としている.約50名の参加者が集まった.
  1日目は2008(平成20)年度事業報告,研究班活動報告,会員による研究・実践報告,自由討論,全体討論を行った.計7つの報告があった.
  2日目は『激動の中のやどかりの里の今!!人・組織・運動』というテーマで,やどかりの里チーフ職員を中心に報告した.やどかりの里の歩みを振返るとともに,今後の展望を描く報告で,次年後に迎える40周年への総括へむけた一歩となるものとなった.
(工藤 菜乃)

(4)研究協力
今年度は下記7件の研究に対して,やどかり研究所運営委員会で報告を受けての検討や意見交換,やどかりの里メンバーへのインタビュー調査,聞き取り調査のコーディネイトなどを中心に協力した.基本的には,毎年行われる,やどかり研究所報告交流集会において報告していただくことになっている.
① 岩井和子さん(星城大学リハビリテーション学部作業療法学専攻)「精神障害を持つものの回復を促進する援助職員の態度とその背景要員」
② 岩崎香さん(順天堂大学スポーツ健康科学部健康学科)「人権を擁護するソーシャルワーカーの機能に関する研究」
③ 鬼塚香さん(上智大学)「PSWの成長過程について」
④ 渡辺里子さん(大正大学)「精神障害者が体験を語ることによる人生の再構築に関する研究」
⑤ 佐々木加奈さん(国立看護大学校)「福祉工場で働く統合失調症の就労認識」
⑥ 高橋奈緒さん(文京学院大学)「精神保健福祉士の業務に関する意識調査」
⑦ 西原 さん(埼玉大学)
(工藤 菜乃)

4)協働ネットワークプロジェクト

 昨年度に引き続き,新規事業種目の開拓と地域ネットワークづくりを目的とした協働ネットワーク推進プロジェクトを実施した.
  さいたま市より委託されている市営霊園の「植栽管理業務」の他,「物販飲食事業」のパイロット事業や「新規事業開拓に関する情報収集」を行った.

(1) 植裁管理業務
  「思い出の里市営霊園」の一部を近隣の3施設(ななくさ大谷事業所,鴻沼福祉会あざみ共同作業所,そめや共同作業所)とともにさいたま市から委託を受け,落ち葉拾いや芝生の草むしりを中心とした清掃作業を行った.また,「市営青山苑墓地」の清掃業務も今年度より委託され,2か所に分かれ作業を行った.
  情報館からは,8名のメンバーが登録(内労働支援プロジェクトの実習プログラムとして2名が利用),週3日,9時30分から11時30分までを,1か所2名のローテーションで作業を行った.
  昨年度は,低廉な予算での実施で,工賃割れをする厳しい状況であったが,今年度はさいたま市より実績が認められ,前年比,約3倍の委託費での実施となった.

(2)物販飲食事業
  春のお彼岸の時期をねらい,食事サービスセンター「まごころ」が中心となって,霊園の管理棟横にテントを張り,手づくりまんじゅうの販売を行った.現在はイベント的事業となっているが,今後は常設の建物内で,障害のある人が関わる物品販売と飲食事業が展開できないか検討を進めていきたい.

(3)新規事業開拓に関する情報収集
  コミュニティビジネスに関する成功事例等,地域の中の協同労働をテーマに情報収集を始めている.また,飲料の最新型自動販売機(エコ・ユニバーサルデザイン)設置に関するビジネスを業者を交え検討したり,墓石クリーニング,墓所清掃など,現行業務に関連した新たな事業起こしの一環として,11月,秩父市営霊園の視察を実施した.
(宗野 政美)

5)ピアサポート事業(仮称)

 今年度行った2級ヘルパー研修の受講生2名から,ヘルパー事業所「とも」でヘルパーとして働きたいという希望が出され,「とも」と協議した結果,やどかり情報館で実習契約を結び,「とも」に派遣する形とした.実習期間を経て雇用契約を結ぶ予定である.
  また,やどかりの里に登録する単身生活者に夕食を宅配する仕事がやどかり情報館に地域活動支援センター(浦和区・大宮区・見沼区)から委託され,5名の従業員(現在は実習生2名を含む)が従事することになった.主な業務はやどかりの里の本部で夕食のお弁当を受け取り,あらかじめ注文している単身生活者に届けると同時に安否確認を行う.これまで非常勤職員が主に行ってきたが,メンバーによるメンバーへの支援の有効性を活かし,同時にメンバーの職域の拡大を図るといった意味合いもあり,今年度新たにスタートさせた.         (増田 一世)

6)人材養成 やどかり塾

 法人内で本来は独立した事業であったが,専任の講師の配置や事務局員の配置が難しいため,やどかり情報館内に事務局を置くこととした.
  今年度は,個別のスーパービジョンが2件行われた.1人は法人職員であるが,1人が外部の精神保健福祉士であった.
  日常実践を振り返り,客観化し,自らの実践の意味づけを行うことは,実践者にとって欠かせないことである.その際にやどかり塾の果たすべき役割は大きいが,他の業務との兼ね合いを図りつつ,必要に応じて事業を実施してきた.        (増田 一世)