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やどかり情報館(精神障害者福祉工場)

やどかり情報館とは
やどかり情報館は,精神障害を持ちつつも,労働者として安心して働きたいという思いから,埼玉 県大宮市(現さいたま市)染谷に1997年4月に開設いたしました.福祉工場の特徴は,障害者として利用する施設ではなく,最低賃金を保障し,労働者として雇用されるところにあります.
やどかり情報館は,やどかり出版,やどかり印刷,やどかり研究所の3つ事業からなりたっています.障害者ならではの情報の発信基地を目指した活動を行っています.私たちは,精神障害者が病気や障害を抱えつつ,前向きに生きていくことの中に大切な価値があると考えています.書籍や,体験発表会などイベントを通
じて情報の発信を行うなど,病気や障害の体験を活かした仕事づくりをしています.
また,障害を持った従業員は,健康を守りつつ働くために,週に最長で35時間(実質30時間)労働です.雇用契約に関しても,常に働きやすい環境を作るために短期間で見直しをして,働く日数や時間をそれぞれの状況に合わせて調整しています.
そして従業員と職員の関係は,ともに仕事のプロフェッショナルをめざすパートナー(同僚)です.1人1人が生き生きと働くためには情報を共有し,ともにやどかり情報館の運営について考えていくことが必要です.そのため,毎週1回の全体会議で,お互いの仕事の流れを共有し,情報館全体の運営について検討しています.
また,染谷という地域の一員として,市民の方々ととも響き合いながら生きていくことを目指しています.やどかり情報館2階には80人で利用できるホールがあり,地域の皆様にご利用いただいております.
やどかり情報館の開設にあたって
やどかりの里は,1970年に活動を開始しましたが,始めの20年間は公的な補助金がなく,自主運営を続けており,存続することに大きなエネルギーを割いていました.精神保健法に社会復帰施設が位
置づけられたことを機に,1990年に援護寮と通所授産施設を開設し,その後作業所,グループホーム,生活支援センターを街の中に開拓してきました.そうした生活を支える資源が充実し,それぞれが街の中で自分らしく生きるための基盤ができたころ,生活保護を返上し,障害年金と自分で働いた賃金で生活したいという希望が出されるようになってきました.そこで検討されたのが福祉工場でした.
やどかり情報館の概要
やどかり出版とやどかり印刷,そしてやどかり研究所の3つの事業により成り立っています.定員は30名ですが,現在18名の従業員が働いています.仕事の内容は,出版では,企画,編集,制作,本の発送、販売管理,文化事業部ではイベントの企画や体験発表会、講師派遣なども行っています.印刷ではコンピューター入力,印刷,製本等の仕事があります.また.研究所では,会員の管理,ニューズレターの発行など,事務局の仕事があります.毎週1回の全体会議で,情報館全体の運営についてと,お互いの仕事の流れについて、情報を共有する努力をしています.
やどかり情報館が大切にしていること
1. 精神障害者の病気の体験や障害の体験には大きな価値があると考えています.その体験を生かした仕事づくりをすることです.
2. それぞれが健康を守りつつ働く職場であること.週に最長で35時間労働(実質は30時間),短期間で雇用契約の見直しをすることになっています.働く日数,時間については,それぞれの状況に合わせて選ぶことができます.
3. 従業員と職員の関係性は援助関係ではなく、お互いがともに働くパートナーであること.そのためには情報を共有し,ともにやどかり情報館の運営について考えていきます.
職員配置
施設長 1
精神保健福祉士 1
指導員 4
看護士 1
医師(顧問医) 1
事務員 1
出版顧問 1
開所時間 9:00-18:00(日,月,祝祭日は休館)
定 員 30名
苦情窓口
苦情解決責任者 増田 一世(やどかり情報館館長)
苦情受付担当者 宗野 政美(やどかり情報館副館長)
第三者委員 新井 俊夫(片柳公民館館長)
その他の活動
・情報の共有を図るため,毎週火曜日全体会議を行っています.
・毎週火,金曜日,全員で館内の掃除をしています.
・年に1回社員旅行に行きます.
・やどかりの里で行われる様々な行事,会合に参加します.
・年に2回地域の清掃活動に参加しています.
ご案内地図

<JR大宮駅(埼京線,宇都宮線,京浜東北線,東武野田線他)から>
東口より
国際興業バス7番(系統:大01)「大谷県営住宅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
時刻表
<JR北浦和駅(京浜東北線)から>
東口より
東武バス(系統:岩02)「宮下行き」「岩槻駅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
時刻表
<向大谷バス停から>

国際興業バス,東武バス いずれも「向大谷」バス亭で下車します.
バス停で降りたら,来た道を少し戻ります.「思い出の里市営霊園」「大宮聖苑」の案内標識が見えますので左折します.
道なりに進むと「思い出の里市営霊園」の入口が左側に見えてきます.さらに道なりに進みます.
左側に「大宮聖苑」の案内標識が出てきますが,まっすぐ進みます.
氷川神社の鳥居を過ぎると周りに畑が見え,民家もまばらに見えてきます.
ビニールハウスを過ぎると「やどかり情報館」につきます.
<JR大宮駅(埼京線,宇都宮線,京浜東北線,東武野田線他)から>
東口より
国際興業バス7番(系統:大01)「大谷県営住宅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
時刻表
<JR北浦和駅(京浜東北線)から>
東口より
東武バス(系統:岩02)「宮下行き」「岩槻駅行き」乗車
「向大谷」停下車 徒歩10分
時刻表
<さいたま市東部,岩槻,春日部方面の方々へ>
さいたま市のコミュニティバスのバス停が「やどかり情報館」の前に設置されました.
バス亭の名前は,「やどかりの里」です.
運行は当面1時間に1便で,東武野田線の大和田駅から利用できます.
どうぞご利用下さい. 料金は,190円です.
時刻表およびルート
雇用までの流れ
情報館見取り図
平成23(2011)年度 事業計画
平成22(2010)年度
事業報告

<平成23年(2011年)度事業計画>
1)やどかり情報館
2012年3月に自立支援法に基づく事業移行を行う.就労継続A型事業(雇用型)と就労移行支援事業の多機能型とする.
事業移行の問題点として,これまでの雇用契約に加え,利用者としての契約を行わなくてはならないことがある.また,A型事業所は利用料を徴収しなくてもいいとされているが,考え方としては働く場に利用料が発生するわけで,大きな矛盾を内包することになる.
精神障害のある人にとって,働き続けるためには,タイミング良く休息をとることや体調悪化の前兆があるときには仕事を休むことも必要だ.しかし,その必要な休みが事業所にとっては不安定運営につながってしまうのが,この自立支援法である.応益負担と日額払いの制度をなくしていくための運動を粘り強く続けていく必要がある.
就労移行支援事業は,現在法人の独自の取り組みとして行っている就業支援室の事業内容をもとに事業化するものである.食事サービスセンターエンジュも就労移行支援事業を行うことになっており,エンジュとやどかり情報館の就労移行支援事業を連携させながら,障害のある人への就業支援を充実させていく.事業移行は2012年3月予定なので,就労移行支援事業の本格実施は2012年度になっていく予定である.
(1)やどかり出版
現在企画している単行本の出版と「響き合う街で」の年4回の定期発行を行う.障害者制度改革,東日本大震災の復興に向けての企画など,必要とされるテーマで企画を充実させていく.編集・組版・校正・テープ起こしなど,やどかり出版の出版物以外にも外部からの仕事の受注も積極的に行っていく.
(2)やどかり印刷
新体系移行に伴う基盤整備に関する助成等を利用しながら,印刷機械を刷新する.デジタルカラー印刷機を検討しており,多品種小ロット生産で,付加価値を高める職場として事業を拡大していく.また,出版事業との連携で効率的な営業活動を行い,受注量の拡大につなげる.
(3)やどかり研究所
社会が大きく変動する中で,やどかり研究所の役割を改めて確認しながら,運営委員会を中心として事業を進める.地域の中での活動展開など,やどかりの里の課題についても取り組んでいく.
(4)協働ネットワーク事業
「協働ネットさいたま」の構成メンバーとして,障害のある人の仕事おこしと地域の協働労働をテーマに活動を進める.① さいたま市営霊園の植栽管理業務請 ② 地域交流イベントの企画 ③ 地域ネットワークの拡充,を今年度の活動として取り組む.
(5)ピアサポート事業
ホームヘルプともが事業を休止するため,ピアサポート事業部に所属する人たちはグループホームなどの入居者への支援を行っていく.また,単身者への夕食宅配事業も地域活動支援センターからの委託で継続していく.
(6)やどかり塾事務局
人材養成の事業であるやどかり塾だが,法人独自事業で専任職員の配置が困難なため,必要に応じて個別スーパーバイズやグループスーパーバイズを実施する.
<平成22年(2010年)度事業報告>
1.やどかり情報館
(精神障害者福祉工場)
今年度は,新たに障害のある人3人が雇用契約を結び,体調不良や他の働き方を選択した結果,3人が退職した.また,社会適応訓練事業所として,3人が職場実習を行った.
① この1年の大きな動き
やどかり情報館の主事業である出版事業と印刷事業は,今年度も仕事は途切れることなく,忙しい1年であった.出版も印刷も納品の期限が定められている仕事が多く,期日に追われた1年であった.
障害のある人たちは,体調に合わせた勤務時間や勤務内容に合わせて,雇用契約を結んでいて,精神疾患や対人関係での困難さを抱えていたり,強い緊張を持ちつつ働くなど,継続して働くことの大変さを実感しながら,それぞれの仕事を進めてきた.印刷機のオペレーター,版下の作成,編集や校正,テープおこしなど,必要に応じて職員がアドバイスや調整を行い,責任ある仕事を受け持って遂行している.
やどかり情報館が開設され13年がたち,自動ドアが故障したり,設備の老朽化も目立ち始めた.印刷機械も担当者が丁寧にメンテナンスを行いつつ使用しているが,オンデマンドの印刷システムへの移行や電子書籍の可能性の追求など,出版,印刷業界の動きもにらみつつ,新システムへの移行を検討してきた.
また,2009(平成21)年度のきょうされん大会の準備に続き,2010(平成22)年9月から始まったこころの健康政策構想実現会議100万人署名推進委員会の事務局を引き受け,全国からの問い合わせ,署名用紙や署名に関するさまざまな用具などを送付したり,日々届く署名用紙の整理や名簿の管理などを行っている.
また,働きたいという希望のある人の見学も増えた.すぐに就職に結びつく人ばかりではなかったが,働きたいというニーズが高いことがわかる.就業支援室と協力しつつ,多くの人を働き手として受け入れていくことや障害のある人たちに最低賃金以上の給与を払い続けるための良質な仕事の確保にこれまで以上に力を注いでいく必要がある.
また,近隣の施設で夜間の盗難事件が起こっているため,警備会社と契約し,夜間,休日の防犯体制を整えた.
② 事業移行に向けての準備を開始
2011(平成23)年度には障害者自立支援法への事業移行を行わなければならないため,そのための準備を開始した.現在の福祉工場の機能は就労継続A型事業にあたるため,主事業はA型事業だが,現在の社会適応訓練事業の実習生の受け入れや,雇用契約を結ぶまでの実習期間,あるいはやどかり情報館で働いている人たちが,企業就労などに挑戦する希望を持った時に支援できるように就労移行支援事業を行う予定である.
働きたいというニーズに応えていくためにやどかり情報館としてどのような機能を用意していくのか,やどかりの里全体の就業支援の機能としてどう考えていくのか,検討を始めている.
現在のやどかり情報館の役割を果たしつつ,自立支援法に定められている雇用契約と利用契約の二重の契約の矛盾を抱えつつ,事業移行の準備を進めることになる.
③ 社会支援雇用制度の政策提言
やどかり情報館館長の増田が,障がい者制度改革推進会議総合福祉部会に参加し,就労合同作業チームに加わり,障害のある人の就労・雇用のあり方の検討を行ってきた.同時にやどかり情報館ややどかりの里の実践をもとに日本障害者協議会に設置された社会支援雇用研究会で検討を進めてきた.その内容を就労合同チームで提案していく.障害のある人の労働の権利を定めた法の必要性とその中に賃金補填を含む社会支援雇用(保護雇用)の制度化を求めていく.自立支援法にはいったん移行せざるを得ないが,障害のある人の働く権利を確立していくための第一歩を踏み出したところだ.
1)やどかり出版
今年度前半は,やどかりの里40周年を機にやどかりの里の活動をまとめることになり,40周年記念出版の編集作業に追われた.やどかりの里で生き生きと活動する人たちの姿を紹介し,労働支援,生活支援の現場から何が見えてきているのか,今後の課題も含めて,実践を原稿化した.書き手は実践者であり,原稿執筆の時間の捻出,日々の実践を活字化することの難しさを実感しながら本づくりを進めた.やどかりの里にとってこの節目ごとに出版を重ねていくことは,活動を振り返り,展望を描く上でも重要であり,実践からの気づきを普通化していくためにも重要である.
また,単行本の出版が続いた1年であった.藤井克徳さんの「見えないけれど 観えるもの」は藤井さんが長年書きためたエッセイを1冊にまとめた本で,編集者としては企画力を問われるものであった.1つ1つの言葉を大切に紡ぎ出す藤井さんとの編集作業は,編集の面白さを実感するものでもあった.
障害者自立支援法訴訟の動きをまとめた「終わりの始まり」は,埼玉県内の原告やその家族の生きざまを表すものであり,自立支援法を次世代に残せないという切羽詰まった当事者・家族の思いのあふれる1冊となった.
途中で編集スタッフが体調を崩し,退職するなど編集部としては厳しい状況ではあったが,出版事業としては充実した1年であった.
やどかり出版の認知度を上げるために,やどかりの里のホームページ上に「もう1つの価値」増田一世のブログを立ち上げ,やどかりの里の実践や出版活動のことなどを含め,発信を始めた.
編集態勢の問題で雑誌「響き合う街で」の発行に遅れが出てしまったことは,次年度の課題である.
障害者施策や精神保健施策を大きく変革させようという大きな動きが始まっている.そうした動きに対応した出版物を発信していくことがやどかり出版の使命でもある.
(1)編集部
① 単行本
単行本7冊,編集・制作を委託されたもの2冊で,昨年の出版点数を大きく上回った.今の人員体制ではこれが限界であった.
今年度,日本の障害者運動の牽引者の1人である藤井克徳さんの「見えないけれど観えるもの」や障害者自立支援法違憲訴訟埼玉版「終りの始まり」など障害問題など社会に知ってもらいたいものを発行できたことは大きな出来事であった.
今後広い視点を持ち目まぐるしく変わる社会に対して常にアンテナを立て社会に発信できるものを考えていかなければいけない.
② やどかりブックレット
ブックレットは今年度家族のブックレット3として,精神障害のある親を持つ子どもの立場からの体験をまとめた「私はこれでいいんだ」と横浜市旭区の当事者,家族,支援者の体験や活動の取り組みをまとめた「ひとりぼっちのあなたへ」の2冊を発行した.
やどかりブックレット当事者からのメッセージはこれで20冊目となった.ただブックレット編集会議で企画について検討するが,なかなかアイデアが出ず企画の難しさを感じた.
また,やどかりブックレット18の著者で,やどかりの里のメンバーの須藤守男さんが亡くなられたことは残念な出来事であった.
単行本一覧
・家庭訪問 2010年6月
・変わる 変える 創る 2010年7月
・変わりゆく世界と21世紀の地域健康づくり第3版 2010年9月
・私はこれでいいんだ 2010年10月
・見えないけれど観えるもの 2010年10月
・心理劇 第15巻 2010年12月
・終わりの始まり 2011年1月
・ひとりぼっちのあなたへ 2011年3月
・さいせいしんNO.16 2011年3月
増刷
・レッツトライ健康学習 2010年8月(第2刷)
・見えないけれど 観えるもの 2010年11月(第2刷)2011年1月(第3刷)2011年3月(第4刷)
・終わりの始まり 2011年2月(第2刷)
③ 雑誌「響き合う街で」
5月号責任編集担当だった斎藤なを子さんがアイルランド火山噴火の影響により帰国が遅れたため,急遽8月発行予定だった研究所報告・交流集会の全面特集に切り替えた.2月号は松田正己さんに責任編集者を変更するなど状況に合わせて対応した. 55号,56号の発行が遅れてしまった.また,動きの早い情勢に対して季刊誌でどう対応していくのか今後検討していかなければいけない.
53号 全面特集 第8回やどかり研究所報告・交流集会
54号 特集 夢を形に 他の者との平等を目指して
55号 特集 一歩踏み出した精神保健医療改革
56号 特集 今の時代(新自由主義)と健康福祉の関係を考える
(2)版下作成部
版下作成部は,職員1名,従業員2名の3名で業務を担っている.従業員のうち1名は,機関紙や単行本などの版下作成,もう1名は,イラストの描画や図表の作成を担っている.
版下作成の業務を従業員も担うようになって丸2年が経過した.手探りであった当初からすれば,この1年の技術力の向上は大きい.機関紙「やどかり」などほぼ従業員の手だけで完成させることができるようになった.
一方,営業力の弱さが引き続き課題となっている.新たな雇用拡大のためにも,業務量を増やしていく必要がある.特に定期的な業務の確保につながる機関紙類の点数は倍増させたい.
(3)文化事業部
① 販売促進
今年度は,インターネット上でさまざまな雑誌を購入できる「雑誌の専門サイト」に登録した.他誌の書評掲載も増え,まず多くの人の目に留まるようにした.近郊の講演会や学会へはできる限り出張し販売にあたった.
また,やどかりの里のホームページに編集長のブログを立ち上げた.さまざまな立場の人にサイトに訪問してもらい,売上に繋がることを期待している.
② 体験発表会
今年度は,体験発表会を2回開催した.
8月7日.東京都内の地域生活支援センターのピアスタッフ黒川常治さんが「ありのままに暮らす-うつ病を体験して,ピアとして生きる」と題して発表した.過酷な労働からうつ病を発症したが,仲間との出会いから焦らない生き方に出会ったことを語った.また,ピアスタッフとしての考えや思いも率直に語った.
2月19日.横浜市旭区地域生活支援拠点ほっとぽっとのピアスタッフ和田公一さん,千珠子さんご夫妻が「出会い,結婚,そして子育て」と題して発表した.お2人の出会い,結婚,出産について率直に語るとともに,「納得ができる生き方」を実感していることを語った.
③ 講師派遣・講師登録者学習会
月1回派遣会議を開催し,各地からの依頼に応じた派遣者の決定,講演の報告,意見交換をしている.今年度はメンバーが学生の前で体験を語る機会が増えた.外部派遣は県外17件,県内16件.内部派遣11件である.講師だった須藤守夫さんが亡くなり,現在4名で活動している.体験を語るメンバーの裾野を広げたい.
また,講師と仲間の体験から学びたい人たちで月1回学習会を開催した.毎回の内容は運営委員会で決定される.前半は共通のテーマで話し合い,後半は体験発表で構成している.「障害のある人の権利条約」の読み合わせをし,身近なことと感じたり,差別の現状から権利条約を学ぶ意味を考えた.
④ 研修事業
体験研修,学生への研修や実習,精神保健福祉士の資格実習等の受け入れを行った.各部署の協力を得,メンバーと職員で研修者の対応をした.遠方から家族会の方々が大型バスで訪れたり,看護の学生が増えたのが特徴である.県内からの研修者は21件251名,県外からは13件96名だった.
また,委託訓練事業を活用し,6月~7月に精神障害のある人を対象にした訪問介護員2級養成講座を開講し9名が資格を取得した.
2)印刷事業(やどかり印刷)
(1)受注・売上状況
やどかり出版の新刊と再版の発行増加に伴い,年間を通しての受注量,売上総額とも,昨年を上回った.一方で,老朽化がすすむ印刷機械のメンテナンス費用がネックとなり,粗利益は微増となった.
印刷業界は,大量印刷,大量消費の時代から,多品種小ロット,印刷形態の多様化の時代を迎えている.家庭用インクジェットプリンターの普及や,必要な時,必要な量だけ出力するデジタル・オンデマンド方式の印刷,電子書籍の台頭等で,大量印刷に適したオフセット印刷機中心の時代から,用途に合わせ印刷方式を使い分ける時代になっている.
現行の受注内容と照らしながら,印刷形態の転換も視野に入れ,印刷全体のシステム構成の大幅な入れ替えを検討し始めている.
(2)態勢
① 印刷部門
職員1名,従業員3名(非常勤)が印刷作業を行い,実習生1名が職場実習を行った.実習生1名は,その後,従業員として雇用契約を結ぶに至った.
職員,従業員ともに,体調面が不良で,4月に従業員1名が復調できず退職.続いて12月には従業員1名が,他分野の職域を希望し退職した.また,10月より職員1名は,体力的な限界もあり,勤務時間を1時間短縮する契約へと変更になった.
従業員の減員や職員の実稼働時間の減少に伴う業務への影響は,従業員1人が刷版から印刷,製本までの工程を,ほぼ作業補助なしに進めることができるようになっていたため,大事には至らなかった.
一方で,肝心の印刷機械が,導入から15年が経過し,機械の寿命もあって,デジタル基盤の不具合が頻発している.現行機の置き換え作業に向けたプランニングを,機械メーカーを交えて始めている.
② 製本部門
専従の担当者を置かず,作業工程に応じて,印刷部門の職員と従業員が分担し作業を進めた.印刷作業と同じように,一定の仕事量を確保し,平準化することが今年も課題となった.
③ 入力・DTP・CTP部門
職員1名,従業員3名(非常勤)が作業を行った.入力作業は主に,福祉関係団体ややどかり出版よりテープおこしの作業を受注し,作業を行った.
また,やどかりの里の所報や機関紙といった紙媒体を,デジタルデータに変換し,しおりを付加するなどの加工作業を進めた.
デザイン・レイアウト作業としては,単行本の表紙やチラシ,ポスター,名刺,はがき等の版下づくりを行った.
④ ITソリューション部門
入力・DTP・CTP部門の職員1名,従業員1名(非常勤)が兼務で作業を行い,電子書籍に関する情報収集と,やどかりの里のWebサイトの運用とネット環境の保守管理業務を行った.
また,やどかり出版や,フットサルクラブ,協働ネットワーク事業におけるポップコーンの出張販売情報等のWebサイトを新設し,運営管理を行った.
その他,こころの健康政策構想実現会議より,100万人署名推進委員会のキャンペーンや,日本健康福祉政策学会より,第14回学術大会の新規コンテンツの開発作業,エンジュ,やどかり出版よりブログの開設を請け負った.
⑤ 営業部門
専従の担当者は置けず,年間を通しての定期的な営業活動をしなかったため,計画していた封筒印刷の顧客拡大と受注量の大幅アップには至らなかった.新規の顧客獲得は数件にとどまり,営業活動の方法と態勢整備が課題となった.一方で,配達などの納品営業には,従業員2名も参加し,取引先に応じて職員と分担し進めることができた.
また,請求事務の一部を従業員が担う等,生産管理や運営に関わる業務も分業化し進めることができている.
3)やどかり研究所
今年度もおおむね月に1回開催された運営委員会で事業計画を立て,進めていった.運営委員会では2010(平成22)年1月から始まった障がい者制度改革推進会議,4月から始まった推進会議のもとにおかれている総合福祉部会の動き,地域主権改革法案,介護保険や子ども・子育て新システムの動きなど,社会保障に関する情勢を共有してきた.ひじょうに速いスピードで検討が進められており,当事者不在,財政論中心の改革であることを共有していった.そうした動きを踏まえて,今年度のやどかり研究所報告・交流集会では,子ども・子育て新システム,障害者の制度改革,高齢者の介護保険改正の動きなどを共有し,社会保障全体がどのように動きつつあるのか,それぞれの領域がどのように対抗の動きを作っているのか,分野を超えて共有できることはないのか,特別シンポジウムとして企画した.
また,昨年度のやどかり研究所報告・交流集会で特別報告をお願いした西山賢一先生のお話を具体的に考えていくために,運営委員の1人である野田妙子さんに運営委員会で問題提起をお願いした.やどかりの里の価値を再認識しつつ,やどかりの里が地域のハブとしての機能を果たしていくことの意味,地域とつながりを強めていくために何か媒介となるものが必要なのではないか.そして,法人内の各事業の有機的な連携をどのように構築し,やどかりの里と地域のつながりをどう作っていくのかということについて,問題提起をいただき議論を進めた.
大学生の卒業論文や大学院生の修士論文作成のためのインタビューなど協力を求められることが多いが,研究所の運営委員会として,協力のための指針を設けて,あらかじめ協力する際の条件を明確にしていこうということになった.
(1)各研究班
① 家族支援研究班
家族への聞き取り,家族へのアンケート調査,精神障害のある人の介護者への状態調査などを法人内の他の部署や他機関と協力しながら進めてきた.今年度は全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)の実施した調査報告,こころの健康政策構想実現会議でまとめてきた家族支援のあり方などを共有してきた.
家族全体を支援する考え方に基づき,家族支援員の必要性,家族の一時的な休息の場の必要性などが明らかになった.
家族支援が必要とされる背景には,民法の扶養義務の規定,精神保健福祉法の保護者制度など,制度の不備もある.障害者支援の制度自体が家族に依存したものとなっていることに大きな問題があることは事実で,家族支援を進めていくには,具体的な支援の実現と合わせて制度の不備を正していく取り組みが重要であることが明確になった.
② 活動の基盤を見つめ現状を捉える力をつける学習会(通称:温故知新学習班)
昨年度は,世話人の集まりが持てず,準備ができなかったため,学習会の開催ができなかった.今年度,職員1人1人がやどかりの里の現状や目指していることを自分なりに理解し,日々の活動に主体的に取り組んでいけるようになることを目的に学習会を再開している.現在の参加者は,1~2年目の職員3名,世話人2名.
今年度は,2000年に行われた状態調査を切り口に学習会を始めた.2回目からは,エンジュの活動を素材に学習を継続し,全4回行った.参加者からは,「目の前のメンバーの話をきちんと聞くことの大切さを学んだ」「メンバーの背景を知ることで,関わり方や見方が変わった」等の感想が出されている.
若い職員が自分たちで活動づくりや人との関わりについて考え,自身の言葉で表現する場として,今後も学習会を継続していきたい.
(2)やどかりサロン
やどかり研究所では,年に数回,地域で活動されているさまざまな立場や職種の方々をお迎えして,研究所サロンを開催している.
毎回研究所運営委員会でゲストについて検討しており,今年度は1回のみの開催であった.
12月4日(土),ゲストにノンフィクション作家である野村路子さんをお迎えし,「子供たちのアウシュビッツ」から学ぶこと 生きる力と明日への希望というテーマで話していただいた.参加者は20名で,参加者からはすばらしいお話でとても感動したという感想があった.
(3)やどかり研究所報告・交流集会
2011(平成23))年2月26日(土)~27日(日)の2日間,やどかり情報館において,第9回やどかり研究所報告・交流集会を開催した.1日目は,2010(平成22)年度の事業報告と情勢共有,会員による研究報告4題と,特別シンポジウム「主役不在の制度改革 だからこそ今考えること,行動すること」を行った.
シンポジウムでは,川端隆さん(新田保育園園長)から,保育の実践とそれを壊そうとしている子ども・子育て新システムについて話され,勝田登志子さん(認知症の人と家族の会本部副代表理事)からは,介護保険の改正に向けた制度改変の厳しさと介護への市場原理導入の弊害について,斎藤なを子さん(きょうされん副理事長)から,障害のある人の権利を主体にした訴訟運動の意味や,障害者基本法の重要性が語られた.
討論では,経済のグローバル化や新自由主義社会の進展は,「公共性」の変質や「福祉」を後退させ,人間の尊厳を顧みない社会をつくりだすのだということが確認された.そして,対抗すべき国民運動の進め方や今後の展望についての討論が展開された.
2日目は,会員による実践報告3題と,2日間を通しての総合討論が行われ,総合討論では,目の前の実践と,世界や社会情勢とを結びつけながら,率直な感想を出し合った.
内容の詰まった2日間であり,多領域からの参加による集会の意義を再確認し,今後の集会の継続性に期待する声もあがった.
(4)研究協力
今年度は下記の4件の研究に対して協力をした.やどかり研究所運営委員会で報告を受け,検討と意見交換の上,メンバーへのインタビュー調査,聞き取り調査のコーディネートなどの協力を行った.
① 小路玉代さん(熊本県立大学大学院)「精神障がい者の地域ケアシステムの構築について~地域ケアシステムのあり方と行政の役割~」
② 関口和司さん(文京学院大学)「精神障害者が抱く地域住民に対するイメージ」
③ 鈴木真帆さん(大正大学)「長期入院を経験した精神障害者が地域生活を獲得するプロセス」
④ 松田花織さん(茨城県立医療大学)「精神障害者のリカバリーを促進する要因の検討」
研究協力の要請にはメンバーへのインタビュー調査が多いが,ブックレットを読んでいない人も多い.メンバーがやどかりブックレットですでに語っていることもある.今後,研究協力を受けるにあたって,「手引き」など作成し,事前にやっておくことなど提示していきたい.
(5)学会発表
2010年10月30日,桜美林大学四谷キャンパスにおいて,第23回日本保健福祉学会が開催され,シンポジウムでは「当事者主体の保健福祉学を考える」というテーマで,子育て支援,高齢者ケア,精神保健福祉活動,ヘルスプロモーション活動などの分野における当事者主体の保健福祉の実践や研究の報告がされた.
その中で,「障害のある人と共に創り合う地域生活支援活動~街の中で生き生きと暮らし,働くことを支える~」と題してやどかりの里から発表した.精神障害のある人の生きる姿,回復の道筋から学ぶこと,当事者と専門職が互いに学び合い,育ち合う関係性の中で活動していること,当事者や家族が単なる利用者ではなく,ともに活動を支え,主体的に活動に参画してきたことなど,やどかりの里が40年間取り組んできた「当事者主体」の活動づくりについて発表し,さまざまな立場や分野のシンポジストや参加者との活発な討論が展開された.
4)協働ネットワーク事業
さいたま市より委託されている市営霊園の「植栽管理業務」の他,「物販飲食に関するパイロット事業」や「地域のネットワークづくりに関する事業」を行った.
(1)植裁管理業務
思い出の里市営霊園と青山苑墓地の植栽管理業務の一部を近隣の3施設とともにさいたま市から委託を受け,落ち葉拾いや芝生の草むしりを中心とした清掃作業を行った.
情報館からは,5名のメンバーが週3日,9時30分から11時30分までを,1か所2名のローテーションで作業を行った.
委託も4年目となり,受託する範囲を広げることが可能かどうか関係者とともに検討を進めている.
(2)物販飲食に関するパイロット事業
9月と3月のお彼岸の時期に,市営霊園内で物販飲食の展開を視野に入れた,試行的イベントを開催した.まごころのおまんじゅう販売を主軸に,近隣施設の授産製品や,ポップコーン,クッキーなどの販売を行った.
イベントは3年で5回目となり,来園者や霊園関係者に定着し始めているが,物販飲食に関する今後の事業展開や商品開発については,関係者間の協議は思うように進んでいない.
(3)地域のネットワークづくりに関する事業
昨年に引き続き,ポップコーンの実演販売を行い,地域のイベントに参加した.
イベントを賑やかにする商品としても評価され,イベントへの参加依頼も年間を通し,17か所から依頼があった.市内を中心に,自治会や,教育・医療・福祉関係者の他,携帯電話の販売店や自動車ディーラー,生協からの依頼もあり,認知度は広がっている.
県外からも反響があり,12月には,横浜市内で,2日間のイベントに参加した.
カップに,広告の挿入を依頼されることもあり,企業広告としても利用され始めている.
また,5月には,きょうされんの映画「ふるさとをください」の上映会を,近隣施設とともに企画,運営し,地元住民200名が鑑賞した.
5)ピアサポート事業
やどかりの里の登録者への夕食の宅配,単身者への家事支援,援護寮での家事支援など,徐々に仕事の幅が広がってきている.今年度からは,エンジュの夕食の拠点までの配達も仕事として加わった.
個別の関わりが求められる仕事が多く,お弁当の届け先の対応は個々に違う.その時々に判断が求められることもあり,やりがいのある半面,難しい仕事でもある.
夕食の宅配については,仕事の委託先の地域活動支援センターやお弁当を製造しているエンジュなどとの連携や協力関係も重要であった.
自動車での配達も行っているため,事故を防ぐためにもゆとりを持った時間を設定し,落ち着いて仕事を遂行できるようにしていくなどの配慮も行われた.
家事支援の仕事については,ホームヘルプとものヘルパーのスーパーバイズを受けつつ,プロのヘルパーとしての技術習得を図っていった.
グループホームの入居者への支援も行うようになり,家事支援に加え移動支援なども行っている.
今年度は6月にホームヘルパー2級の講座を開催したが,今年度はピアサポート事業部で働きたいという希望は出なかった.
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