やどかりの里援護寮
<平成23年(2011年)度事業計画>
1)援護寮
今年度4月より,宿泊型自立訓練(生活訓練)事業に移行する.2012年1月から予定している改修工事の完了後の2012年度に,日中の自立訓練(生活訓練)と生活介護の多機能型を追加申請していく予定である.
今年度は,改修工事と工事に伴う資金づくり,日中の生活訓練と生活介護を想定したプログラムの拡充を進めていく.プログラムの拡充には,生活支援センターとも連携し,地域生活を送る障害のある人のニーズを把握し,具体的なプログラムの検討を進める.
利用者へは,地域生活への移行に向けて,1人1人の生活課題や利用希望に沿った支援を行っていく.利用者の抱える多様な健康課題,生活課題に応じて重層的に支援を行う.個別支援とあわせて,集団のプログラムを活用し支援していく.
地域生活移行に向けては,サービス調整会議を活用して検討するなど,市内の関係機関との連携を強めていく.
<平成22年(2010年)度事業報告>
1.やどかりの里援護寮
今年度は,援護寮の改装,移行に向けて準備を行った1年であった.補助金申請と,日中活動の見直しを行った.
1)改装,移行に向けて
2か月に1回開催した援護寮運営会議を中心に,改装,移行に向けて検討を重ねた.
改装については,現状の3階部分10室の居室と2階部分1室のショートステイの部屋に加え,2階に居室を5室増設する.また,1階には日中プログラムの活動スペースも確保し,エレベーターも設置する.計画に基づき概算を出し,資金計画も作成した.(詳細はP61を参照)今年度は,社会福祉施設等施設整備補助金申請に向け,さいたま市とも協議を重ね準備した.8月に申請書類をさいたま市に提出.11月12日に準備審査会が開催され,市に対し計画の説明を行った.2011年6月頃,補助金の内示が出る予定である.
移行に関しては,生活訓練事業に加え,生活介護事業も併設することとした.市内の地域活動支援センターやグループホームの利用者は高齢化が進んでいる.また,自宅中心の生活をしている利用者に対して,地域の中で孤立せず障害の重度化を防ぐプログラムが必要である.社会参加の場として,創作的活動や他の利用者との交流等の生活に張り合いや楽しみが持てる活動が求められている.
移行計画は,2011年4月に宿泊型自立訓練事業に移行し,2012年3月末に改装工事が終わり日中活動の場が確保できた時点で,生活訓練・生活介護事業を追加変更申請することとした.
2)施設管理
利用者の安心,安全を守るために必要な環境を整え,以下のことを行った.
@ 健康診断の実施(7月,2月に実施)
A 防災訓練の実施(12月,2月に実施)
B 語り合い(2週間に1回開催)
利用者間で,より快適にお互いが生活するために必要な事柄を話し合った.学習会や行事などの情報共有にも活用した.
C 厨房改修(2月実施)
設備整備等事業を受け,業務用の厨房設備から家庭用の設備2セットに改修した.アパートを想定した設備とし,複数の人が同時に使えるようになった.
3)個別支援
(1)体験利用の受け入れ
今年度の体験利用は25名で,家族同居が4名,入院中が21名であった.体験利用を地域生活を送る上での力量を見極める機会と位置付け,緩やかな集団生活の中で,生活習慣や人との関わり方,困った時の対処法などについてアセスメントを行った.重複障害を持つ人たちの受け入れも多く,自分で考え,過ごし方を決めていくという,これまでの援護寮の支援だけでは生活の安定が難しい人もいた.そのため医療機関や障害者生活支援センター等と連携し,必要な支援態勢を整えた上で単身生活やグループホーム等への暮らしを選ぶ人たちもいた.また,入院が長期化し,退院への不安が強い人たちは,日中プログラムの体験利用や日帰り利用から始め,まずは援護寮の利用者や職員との関係を築くことを大切にして,関わってきた.個人の力量だけでなく,地域生活に必要な支援態勢を検討する役割が大きかった.
(2)利用者への日常生活支援
今年度の新規入所者は4名.1人1人の生活習慣や体調に合わせた対応を行ってきた.個別支援計画に基づき,日中の過ごし方や金銭管理,家事支援,手続きの同行など直接支援や関係機関への連絡・調整などを行った.
今年度の特徴として,内科疾患により健康管理が必要な人に対して,より具体的な対応が求められた.毎日の血圧,体温,体重測定に加え,塩分コントロールのための食事を外部に発注するなどの調整を行った.また,訪問看護を利用し,服薬管理や健康管理を行う人もおり,医療との連携によって生活の安定を図れるよう態勢を整えてきた.しかし,援護寮の生活の中では体調管理がうまくいかず,入院治療を必要とする人も出てきた.集団生活による人間関係や生活リズムの崩れなどが要因となっており,援護寮だけでなく,関係機関と共に本人に必要な支援態勢や暮らしの場を検討することが必要である.一方で,「部屋から一歩外に出ると話し相手がいることが安心」「外出から帰ってくるとおかえりと言ってくれる相手がいるのがうれしい」など,人との関わりの中で暮らしを充実させている人たちもいた.
(3)地域生活移行に向けた支援
今年度の退所者は3名であった.昨年同様,アパートやグループホーム等へ移行した人が安定して地域生活を継続できるよう,訪問支援を行った.同時に,関係機関との連絡・調整を行い,地域生活に移行しても本人が孤立しない態勢を整えてきた.
また,援護寮の退所に向けた支援として,日中プログラムとも連動し,退所後の自分の暮らしをイメージできるよう,アパートやグループホームの見学等を行ってきた.具体的に援護寮退所後の暮らしの場を見学することで,自分の暮らしを考え,実際にアパートを決めた人もいた.また,退所した後も日中のつながりを持てることを意識し,地域活動支援センターや授産施設等を活用するなど,関係機関と連携し,多様な過ごし方ができるよう取り組んだ.
(4)さいたま市退院支援事業との連携による支援
昨年同様,さいたま市精神障害者退院支援事業を利用する人たちの受け入れを行ってきた.具体的には,ケア会議への参加や援護寮の見学,体験宿泊によるアセスメント,日中プログラムへの参加受け入れを行い,関係機関と共に退院に向けて準備を進めてきた.「同じ病院の人がいたので安心した」「援護寮では1人部屋で過ごせるのが良かった」という感想の他に,「退院するとお金がかかる」「日中,1人で過ごすのが寂しい」など退院することへの不安も聞かれた.
今年度は8名の事業利用者が体験利用を行い,うち2名が援護寮へ退院となっている.
(5)今後の課題
これまで,1人1人のニーズに沿って,過ごし方や暮らしの態勢を検討してきた.しかし,本人の希望に任せる部分も多く,その結果,生活費を趣味や嗜好品に使いすぎる,生活リズムを崩す,食事の管理が難しく内科疾患を悪化させる等の課題が見え,自由な暮らしが本人のいのちを縮めることにもつながりかねない状況もみられた.本人の安心を保障しながら,安全な暮らしを実現していくための態勢づくりが必要である.
@ 日中プログラムの充実
1人1人のニーズに沿って既存の資源を有効に使いながら日中の過ごし方を考えるようになってきている.一方で,援護寮での暮らしに関わるプログラムがあることで,日中の過ごし方を選び,自分の暮らしに活かせる人たちもいると考えられる.
A 多様なニーズに応えられる住まいの場の確保
援護寮の利用を希望する人たちのニーズや課題は,年々多様化している.特に,高齢化により食事や服薬の管理が必要となる人たちや常に精神的な不安定さを抱えている人たちに対する見守りのある場が必要である.
これらの課題は,援護寮だけではなく,地域の人たちや医療機関,関係機関等にも協力を呼び掛けながら,考えていきたい.
4)グループ・サークル活動
(1)グループ活動
@ 話し合い
毎週水曜日の13時30分から,援護寮利用者を対象に活動を行った.今年度は,参加者1人1人が退所後の暮らしをイメージできることを目的に,援護寮を退所した人を訪問し話を聞く,アパートの空き室や地域活動支援センターの見学などを行った.また,栄養バランスの整った食事について考える機会として,授産施設エンジュの栄養士の協力を得て,食事の基礎について話し合いを行ったり,電子レンジを活用した調理を試したり,実際に学び,体験する機会をつくった.
A 青空の会
毎週火曜日と金曜日に体力づくりと参加者同士の絆を深めることを目的に活動を行った.「青空の会に参加し,仲間と話すことが楽しみ」「生活の張りになっている」等の感想が参加者から出され,青空の会の活動が生活の一部になってきていることがわかった.一方で,青空の会への参加を希望しているが,距離が遠く自宅から通うことが難しい,体調の不安定さを抱えているなど,継続した参加が課題になる人も増えてきた.
B ゆりの会
毎週火曜日に昼食を食べながら過ごすことを中心に活動を行った.参加者が日々感じていることや暮らしの中で感じている不安や悩みを共有し,参加者同士がお互いに励まし合う場となった.今年度も体力づくりに取り組み,グラウンド・ゴルフへの参加,DVDによるテレビ体操などを行った.また,イベントとして,さいたま新都心での映画や菖蒲園など外に出かける機会も作ってきた.1人ではなかなか行けない場所もみんなといっしょに出かけられ,生活のメリハリとなっている.
C 生活技術プログラム
毎週金曜日10時から,1人暮らしに必要な家事を身につけていくことを目標に,参加者が不安に思っていることや覚えたいことを出し合い,予定を立てて取り組んだ.体験利用で参加する人もおり,退院後の暮らしをイメージすることにつながり,1人だとなかなかできない調理等の体験をする場としても活用された.
(2)サークル活動
昨年度に引き続き,コーラス,料理教室,手芸,畑そだて隊の4つの活動を行った.コーラスは,新たに黒木聡子先生を講師に迎え,関根則子先生と共に,第1・3・5木曜日に開催した.料理教室は中田節子先生を講師に毎月1回開催した.毎回,参加者で話し合いを行い,季節に合わせた料理を作ってきた.昨年9月より始まった手芸サークルは,第2・4木曜日に開催し,参加者同士でおしゃべりをしながらゆっくりとした時間の中で,自分の作品をつくった.畑そだて隊は,地元のNPO法人見沼ファーム21の協力を得て第1・3土曜日を中心に活動した.参加者が少なくなり,今年度で一旦サークルとしての活動を中止する.見沼ファーム21との関わりは,今後も継続していく.
(3)今後に向けて
前述した個別支援の課題とも連動し,1人1人のニーズに沿ったプログラムづくりだけではなく,援護寮の暮らしの中で生活を組み立てていくプログラムの必要性がみえてきた.これまでのグループ・サークル活動で担ってきた役割を整理し,今後のプログラムづくりへと活かしていきたい.
日常生活で必要となる家事一般の技術獲得,時間や社会ルールに沿って生活を送る枠組みが必要となる人たちに向けて,生活の一部をプログラム化して取り組むことも検討していきたい.また,生活リズムを安定させるために,趣味や楽しみとして取り組むプログラムもより充実させ,やどかりの里の既存の資源も含めて,日中プログラムについて検討していきたい.
5)ショートステイ
今年度は,26名がショートステイを利用した.例年と変わらず利用者の年齢もさまざまで,その利用目的も多岐にわたった.
(1)利用の背景
今年度は,利用希望した人の中で,本人が親の介護をしており,親が介護保険によるショートステイを利用する際の自分の休息を目的とした利用相談があった.同居している家族の事情により利用する場合には,相談内容が深刻化しているものもあった.いっしょに生活するなかで,家族間に暴力をふるう(親や兄弟が本人に,本人が親に)ほどの切迫した状況があるにも関わらず,世帯分離がすぐには難しく,本人が毎月継続的に利用していることもあった.ショートステイ利用だけでは問題解決しないこともあり,障害者生活支援センターと連携しながら継続して関わってきている.
(2)ショートステイ実施機関の不足の課題
ショートステイを利用するために,移動支援が必要な人の相談もあった.普段は自宅で移動支援を利用している人でも,ショートステイを利用する際には使えず,家族等が送迎できる時しか利用できない.また,遠方の人が利用する場合,交通費がかかり,利用したくてもできないという状況も出ている.本来は,それぞれの住まいの近くにショートステイ実施機関が増えていくことが求められる.ショートステイ実施機関の不足が課題である.