やどかりの里援護寮


<平成21年(2009年)度事業計画>

1)援護寮

 地域生活への移行に向けて,利用者1人1人の生活課題や利用希望に沿った支援を行っていきます.今年度は,援護寮の支援態勢の見直しを行い,体験利用をより有効に活用し,利用希望者の生活に関するアセスメントを丁寧に行える仕組みをつくっていきます.利用者は,多様な健康課題,生活課題を抱えており,それらの課題を明らかにし,課題に応じた個別支援を重層的に行います.また,共通する課題を持つ人が共に考える場をつくり,さまざまなプログラム活動を活用しながら対応し,生活支援センターとも連携しながらプログラムの充実をはかっていきます.
  入居者の抱える課題によっては,援護寮だけで対応できないものもあり,地域生活移行に向けてサービス調整会議を活用して検討するなど,市内の関係機関との連携をさらに強めていきます.
  また,さいたま市の退院支援事業の推進のために援護寮への期待は大きく,1人でも多くの人が退院し,地域生活に移行できるよう,関係機関との連携をはかっていきます.
  今年度は,新事業への移行計画を具体化し,合わせて建物の改装計画を作成し準備を進めていきます.


<平成20年(2008年)度事業報告>

1.やどかりの里援護寮

 援護寮では,障害者自立支援法にもとづく移行の問題があり,入居者のニーズに応えるだけでなく日中活動の充実を図ることが求められている.そこで今年度は,自立生活支援プロジェクトを援護寮に位置づけた.自立生活支援プロジェクトでは,今年度から始めた新しい活動もあり,今後も,暮らしに関連するテーマの活動は必要に応じて作っていきたいと考えている.
  また,今年度は,援護寮の現状と今後の方向性を検討する場として,運営会議が定着した.新しい日中活動についての検討や,近年援護寮を利用した人たちの抱える生活課題から,援護寮の機能を整理した.そのうえで,援護寮の支援態勢の見直しを行った.体験利用の機会に利用希望者の生活に関するアセスメントを強化すること,マネジメントの機能と個別的な日常支援を整理することなどが確認された.今後,さまざまな課題を抱えた人への対応をスムーズに行うために,具体的な態勢整備へとつなげていく.
  ショートステイでは,特に緊急に利用した人のニーズから,精神疾患に限らず,様々な生活上の課題を抱えている人々の状況が明らかになった.いずれも援護寮の提供できる支援だけでは解決しない課題である.その多くは,これまで本人が必要な支援を受けてこなかったことによる生活破綻であった.関係機関との連携がよりいっそう求められる.改めて地域の様々なニーズを発見する機会として,ショートステイの意義が確認できた.
  来年度は,いよいよ自立支援法の新事業への移行について,具体的な計画を立て準備を進めなければならない.下半期に入って,中川を拠点とする部署と,将来構想について検討を始めている.建物の改装も含め,中川の地でどういった事業,活動に取り組むのか,新事業へはどのように移行するのか検討を進めていきたい.       (白石 直己)

1)  生活訓練施設
  援護寮では,入所利用,体験利用,休息利用など,1人1人の希望に合わせた利用ができるよう対応してきた.今年度の入所者は7名,退所者は6名であった.

(1)個別支援

<地域生活移行に向けた支援>
  援護寮に入所前から,退所後の暮らしについて1人1人の希望を聞き,安定した暮らしの実現に向けて支援計画を作成し,関係機関との連携を図ってきた.今年度の特徴は,援護寮だけで支援態勢を考えるのではなく,サービス調整会議やケア会議などを開催することで,安心できる関係性を地域の中に作るよう意識したことである.特に援護寮を出て,1人暮らしに移ることへの不安が強い人には,退所後に関わる機関との関係を築くことができ,安心を得てから地域生活に移行することができた.

<日常生活支援>
  個々の生活習慣,体調に合わせた対応を行ってきた.昨年度からの課題である健康に関する支援として,保健センターとの連携や体調に合わせた食事の提供ができるよう調整し,態勢を整えた.さらに,怪我や内科疾患のために通院が必要となったメンバーに対して,通院同行や医療機関の調整を行った.また,今年度は,日常的に金銭面での見守りを必要とする人に対して,一緒に確認し,使い方を考えるなどの対応も必要とされた.

<退院支援事業との連携による支援>
  今年度の入所者のうち,3名はさいたま市精神障害者退院支援事業を利用しての退院となった.昨年度同様,ケア会議への参加,見学や体験宿泊の受け入れを行い,退院に向けた準備を進めてきた.特に不安の強い人に対しては,月に1回の体験宿泊を約1年間継続するなど,丁寧な関わりが必要とされた.また,退院支援事業終了後も引き続き地域生活に向けて,担当区の障害者生活支援センターに関わってもらい,地域生活への移行を進める入所者もいた.

<新規利用相談>
  今年度は,複雑な課題を持つ利用希望者が多く,これまであまり相談のなかった児童相談所や保健所,支援課などからの相談が寄せられた.そのため,利用相談への対応から関係機関への連絡・調整を行うなどの対応が求められた.精神障害に合わせて,発達障害や知的障害などとの重複障害によって,地域生活を送る上での生活体験が少ない人たちの生活課題を明らかにするための利用や,年齢制限により児童施設から等,次の居住地を探している人からの相談などが見られた.

(2)運営会議
開催日;4/23,6/4,7/16,9/17,10/22,11/26,12/17,1/21,2/25
  今年度は,全9回の開催.検討内容は,援護寮の機能と支援態勢の整備が中心であった.これまで利用してきたメンバーの支援を通して,具体的な態勢整備へとつなげていった.

(3)施設管理
  昨年に引き続き,利用するメンバーが安心,かつ,安全に利用できるよう施設環境を整えてきた.
@  健康診断の実施
  昨年同様,7月と2月に健康診断を実施.今年度は8名のメンバーが受けた.
A  防災訓練の実施
  5月と11月に火事を想定した避難訓練を実施.11月は,防災設備の業者より職員が来所し,消火器や非常ベルの使い方などを教わった.
B  語り合いの実施
  昨年同様,利用しているメンバーで援護寮の使い方や情報共有を行う場として活用した.

(4)日中活動
@ グループ活動「話し合い」
  毎週水曜日,13時30分から14時30分までの1時間をグループ活動「話し合い」の時間とした.今年度は,参加するメンバーが入れ替わることも多く,1人暮らしについての話をするだけでなく,援護寮から1人暮らしを始めたメンバーのアパート見学等を行った.
  また,それぞれの暮らしの中でデイケアや活動支援センターを活用する人も増えており,援護寮内のグループ活動として,どのようなことが必要とされているのか見直す時期となった.メンバーからは,「外出していろいろな活動を見たい」「ボーリングなどの体験をしたい」「食事の準備として活用できる店を知りたい」等の意見が出され,地域資源や地域生活の情報収集,レクリエーション,体力維持などを大切にしたグループ活動をしていくことを確認した.
A サークル活動
  昨年度に引き続き,コーラス,料理教室,畑そだて隊の3つの活動を行った.コーラスは関根薫先生・関根則子先生に講師として来ていただき,隔週木曜日に開催した.料理教室は中田節子先生を講師に毎月1回開催した.畑そだて隊については,見沼ファーム21の協力を得て第1,3土曜日を中心に行った.

2)自立生活支援プロジェクト
  今年度より,今後の事業移行を見据え,援護寮のプログラムとして位置づけた.昨年度に引き続き,グループ活動(青空の会,ゆりの会)を行った.とまり木の会については,4月で終了となっている.また,新たな日中活動プログラムを開始した.

(1)生活技術プログラム
  今年度9月から新たに始めた活動である.援護寮では,1人暮らしに向けた支援をこれまでも個別に行ってきた.その中で食事づくりや掃除,洗濯の仕方など,具体的な家事を身につけていく機会の必要性が見えてきた.そこで,少人数の仲間といっしょに家事を行うことを通して,家事の方法を覚えるプログラムを開始したのである.この活動は援護寮入居者に限らず参加できる形にした.これはすでに1人暮らしをしているメンバーにとっても,より快適に暮らすためのヒントになればと考えたためである.
  毎週金曜日に開催.6名が参加.講師に飯田たか枝さんを迎え,料理,掃除,繕い物,買い物など,1人暮らしを想定して不安なこと,身につけたいことを参加者と出し合い,予定を組んだ.毎回できるだけ簡単な方法で行い,目や体を使って覚えることを重視した.
  「実際にやってみて分かった」「他の人の疑問から,気づかなかったことが気づけた」といった参加者の声から必要性が確認できた.一方で「半年参加して感触がつかめた」という参加者もおり,6か月が1つの区切りだということも見えてきた.今後も新しい参加者を迎え,継続していきたい. (白石 直己)

(2)回復を支援するグループ;青空の会
  今年度は,@ 外出のための体調管理,A 体力づくり,B 人との付き合い方・コミュニケーションを目的に,毎週火・金曜日に活動を行った.火曜日は,体力づくりのためのスポーツが中心で,前半はウォーキングに取り組んだ.10月以降,グラウンドゴルフを取り入れ,近隣にある埼玉県障害者交流センターを借り,地域活動支援センターの登録者にも声をかけて楽しみながら体力づくりを行った.金曜日は,グループ参加者との話し合いの中で,日常生活の中で体調管理ができるよう,アンケートを作成し,1週間の目標を立てることとその振り返りを行うことで取り組んだ.現在7名のメンバーが参加している.また,通信を発行することで,話し合ったことをまとめ,同じ悩みを持つメンバーへ自分たちの活動を伝える取り組みも行った.仲間とのつながりを広げ,より多くの人たちが自分の生き方を考えられるグループ活動にしていきたい.        (玉手 佳苗)

(3)ゆりの会
  今年度は,毎週火曜日に活動を行った.活動内容としては,例年通り昼食を食べながら過ごすことを中心に行った.また,食事前後には,自分の身近な出来事や感じたこと等を自由に話し合った.
  昨年同様,参加メンバーが少なく,参加メンバーを増やしていくことは,大きな課題であった.多くの人に活動を知ってもらえるような活動内容の工夫が必要であり,そのきっかけとして,青空の会で行っているグラウンドゴルフへの参加を定期的に行った.ゆりの会メンバー以外のメンバーとの交流やゆりの会の活動を知ってもらう機会となった.加えて,高齢化による機能低下の予防としても,グラウンドゴルフへの参加が適度な運動となるよう,今後も積極的に参加していきたい.
(渡邉 寛之)

(4)とまり木の会
  昨年度末に1年間のまとめとして,参加者の学びとそれぞれのメンバーについてどう思ったのかを書いた小冊子を作成した.その取り組みで4月18日に一旦終了し,個別支援へ切り替えた.必要に応じて,他グループ活動を利用するなどの支援を行っている.
(玉手 佳苗)

3)ショートステイ
  今年度は,昨年度の休息や一人暮らしに向けた準備等を目的に利用する人に加え,DV(ドメスティックバイオレンス)や虐待,貧困などを背景とした緊急の利用相談が多く寄せられたことが特徴である.また,これまでの利用者は比較的やどかりの里が運営している支援センターに登録している人の利用が多かった.しかし,ショートステイのパンフレットを作成し,広く周知していくことで,さいたま市内各区の支援課を相談の窓口として,直接援護寮に利用相談をする人も徐々に増えてきている.

<緊急利用から見えてきたこと>
  緊急の利用については,近年,より問題の背景が複雑化してきている.中には,家族や同居者から暴力を受け,自宅にいることが困難になったケースや,生活が破たんした状況にあるなかで,ゴミや住居の汚れ,異臭などの問題で不動産業者より住居の退去を迫られたケース等があった.利用の仕方は,大きく2つに分けることができ,1つは,次の居住先や相談先につながるまでの一時避難先として使う場合.2つ目は,一時避難先としてショートステイを利用するものの,援護寮を生活の場として生活を組み立て直していく場合である.後者の利用期間は約2〜4か月程になる.いずれの場合においても,本人や関係機関とともにケア会議を開き,これまでの生活を振り返りながら,必要な支援を整理し,調整していくことができた.しかし,あるケースでは,本人はDVの問題を抱え,今すぐ保護や専門的な支援が必要にも関わらず,精神障害があるということで婦人保護施設をスムーズに利用できず,その調整に時間を要するケースもあった.急を要する場合で,特に夜間や土・日・祝日などを挟んでしまう際の支援態勢は,依然として市内には整っておらず,そのことで,本人の状況を関係機関と共有する機会がとれないことも起こっている.

<利用相談から見えてきた課題>
  利用相談は,年々増加傾向にあり,利用者の障害特性や利用の背景も様々である.発達障害や,精神障害と知的障害を重複している人の利用も増えてきている.相談の中には,自分で生活時間をマネージメントすることが難しく,自宅での生活リズムを変えずに利用できるよう配慮が必要であったり,コミュニケーションに工夫を要したりする人もいた.単に,食事や宿泊の場の提供をするだけではなく,安心して生活することを保障するために,生活場面での個別ケアの必要性も感じた.
  また,家族の緊急避難先や,家族もいっしょに宿泊できる機能の整備も早急に必要である.本人と家族の間で互いに距離を置くことが必要でも,本人の体調が悪く外出することができない状況にあったり,環境の変化に適応しづらかったりすることもある.そういったときに,家族のショートステイ利用が可能であれば,互いの休息を図ることもできる.また,環境に慣れるまでの本人の不安が大きいこと等を考慮すると,本人と家族がいっしょに宿泊できる機能も必要である.さらに,現在は,援護寮に併設する形でショートステイを実施しているが,利用者にとっては,急に知らない人たちの中に入り,共同生活を送ることにもなる.人によっては,休むつもりが逆に不安や緊張で疲労してしまうこともある.共同生活の場所ではない,「離れ」のような形で単独利用できるものも今後必要だ.

<ショートステイの果たす役割>
  ショートステイの利用が,本人やその家族に起きている問題の直接的な解決策にはならない.しかし,利用をきっかけに,それらの問題を整理することや,必要な相談をしながら自分で解決する力を蓄える期間になっている印象を持つ.また,DVや虐待,貧困(労働や雇用,経済基盤を保障する制度の不備も含めて)等の,精神疾患に特化した問題だけではない相談背景から,地域のニーズを知ることにもなっている.今後もさいたま市や関係機関とともに,見えてきた課題に取り組み,ニーズに沿ったものを展開していきたい.
(黒坂 牧子)